ホルテンさんのはじめての冒険(2007)/英国王 給仕人に乾杯!(2007) @ギンレイホール

ヨーロッパの、あまりなじみのない(あまりこの国の映画を見たことってないなという)国の映画二本立て。どちらも主人公はおじいさん、という共通項がありながら。かたや飄々と「多くを語らずすべてを語る」あたたかいユーモアにつつまれる映画、かたや「兎に角喋る喋る、喋るくせに本心は言わない」毒っ気たっぷりの映画。いろんな国の作法があるなあ。いろんな人が、いろんな歴史が、いろんな暮らしがあるなあ。実におもしろい対比の二本立てでした。

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ホルテンさんのはじめての冒険 [DVD]

ホルテンさんのはじめての冒険 [DVD]

2007年/ノルウェー/90分/カラー/監督: ベント・ハーメル/出演:ボード・オーヴェ
勤続40年、生真面目な列車運転士ホルテンは、定年退職日の朝、はじめて列車に乗り遅れ、次々珍事に巻き込まれてしまう‥。溢れる不条理、奇妙な設定、そして善意あるユーモアに色どられた人間讃歌。

この、独特な映画のことを、なんていえばいいのだろう。「夜はたのし」。あるいは、「夜はやさし」?飄々としすぎていて、一見とっつきにくいのだけど。なんだろうあらら、さりげなく普通に、なんだかヘン。目が離せない。鉄道員たちの「三三七拍子コール?」シュッシュー!にプクーって笑って、あとはもう、クスクスクスクスさせられっぱなし。なんだってもう。あんな涼しい顔してあんなとぼけた振る舞い。きっとノルウェーっていろいろ豊かなのね。 

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英国王 給仕人に乾杯!

2007年/チェコ・スロヴァキア/120分/カラー/監督: イジー・メンツェル/出演:イヴァン・バルネフ、オルドジフ・カイゼル、ユリア・イェンチ
ホテル王になる事を夢みて、給仕人として働いて来た小さな男ヤンを主人公に、小国チェコの激動の現代史を軽妙、洒脱に語る。名匠イジー・メンツェル監督の待望の最新作。

とても美しい映像のなか、毒っ気はエスプリどころかもはやえげつない。なんか、すごいな。あっけにとられた。人種が違うって、もう、なんだか。ほんとに色々違うのねえ。ワカンナイ。わかんないけどおもしろい。なにこの映画おもしろい。この監督の映画ほかの作品も見たいなあ。世界は広いな。ふだんわたしの見る世界のちっぽけなこと。ああおもしろかった。
えげつない展開のなか、清涼剤だったのが美しい娘たち。といってもメインの2人、チョコレート工場の娘と、奥さんになるリーザはあんまり好きな顔じゃないんだけど。歴代の恋人3人がどれもすごく綺麗で色っぽくていい。特に東プラハの娘ユーリンカ役のシャールカ・ペトルジェロヴァーの妖精ぷりったら!白状します。彼女の場面が見たくてこの映画二回観ました*1。パンフレットも買いました(まさか写真が一枚も掲載されていないとはね。ショック)(日本のHPにもチェコのHPにも写真が無いのはなぜだろう‥。これまたショック)(わたし的にはジュリー・デルピー以来の衝撃。ジュリー・デルピーとレイチェル・リー・クックをまぜたようなお顔と思う)。スタイルもいいし肌も綺麗。あの裸はCGですかと聞きたくなるほどの美(この映画のなかのCG使いが、どういうわざと?と思うくらいほほえましい「やってみたよ」的合成で少しうけた)。この人の場面を見るためだけにも、DVDが出たら買いたいくらい。夢中よ。ユーリンカ。
映画の内容とは関係ないけど、気になったこと。
それは女体盛り。大きな声で言いたい。「ここに素敵な女体盛りあり」。
主人公のヤンは、愛の行為として、恋人の裸身を美しいもので飾るのだけど*2。はじめての女の人にはひなぎく。これはスィートにロマンチック。ふたりめには、お金。‥ブラックだけど、同じ職場の同僚なので、ふたりの間ではジョークとして成立しているっぽい。この段階で、「‥これは女体盛り?」とモゾモゾ気になって。出た。3人目には、果物出ました。食べ物で飾られたからには女体盛りと認定しないわけにはいくまい。よし、これが女体盛りか(パイナップルって)。映画で女体盛り見たの、ハジメテかも知れない*3。というかTVや現実でも見たことないから、女体盛り見たの、ハジメテかもしれないんだけど。ハジメテにして至高レベルの女体盛りを見てしまった気がする。
‥自分の脳内映画データを女体盛りで検索したところ、唯一ヒットした類似画像は「ひなぎく」のなかのあれ*4。女体盛りに似てないこともない。奇しくもチェコ映画チェコの人たちは女体盛りが好きなのかしら。「ひなぎく」の監督のヒティロヴァと、このイジー・メンツェルは、映画学校で同級生だったらしいので、その学校のなかで女体盛りブームがあったのかもしれない。なんにしろ気になるわー。気になってネット検索してみたものの、‥そんなお下劣な視点からこの映画を語る人はいないのかしら。この映画を見て女体盛りに触れないことのほうがわたしには不自然に思えるんだけど。心細くなった頃、チェコ版「英国王 給仕人に乾杯!」ホームページのリンクに女体盛り画像発見*5。やった!わたしの着眼点は間違ってなかった!しかしこうして明るい照明のしたで見ると、女体盛りってえげつない。映画のなかで美しかったのは、ライティングとか色調とか計算して計算してさらにあれこれ微調整につぐ微調整なのだろうなあ。すこし夢やぶれたり。
(家に帰ってからKに、「きっとわたしの人生のなかでリアルに女体盛りを見ることはないんだろうなと思ったんだ」とさびしい気持ちを語ったら、「ふつう見ないと思うよ」と興味なさそうだった。あまりにそっけなくされて、どうかと思った)

*1:先週風邪をひくまえに。そのときは急に残業になって「ホルテンさん」は見れんかった。今日は「ホルテンさん」だけ見るつもりだったんだけど‥。この人のところがやっぱりもう一度見たくて

*2:奥さんになるリーザにはそゆこと一切出来ないのがまたちょっと切なくていい

*3:日本映画で見たことあるよな気もするんだけどなー。思い出せない

*4:ひなぎくのなかのあれ

*5:チェコ版HP :根気強く探してネ!)