メアリー・ブレア展 @東京都現代美術館
私は“3つの仕事”をした。妻であり、母であり、そしてプロのアーティストだった。
色彩に生きた女性アーティスト、メアリー・ブレア。スタジオジブリと届ける、たった一度の展覧会。(→HP)
大量の展示に、溺れそうになった。
上質なお菓子のように甘く深い色使い。とても均整がとれたようでいて、つねに感じる胸騒ぎ。不思議な奥行き‥。これは物語を秘めてるってことなのかな。ディズニースタジオでの作品がとても素敵だった。映画「ファンタジア」にあった、「公開のたびに新しいエピソードをつけくわえる」というおとぎのような構想にどきどきした(しかし「ファンタジア」は興行的には失敗したため、この構想は見送ることに‥。「ベイビー・バレエ」、見たかったな)。ディズニーを出て、独立して手掛けたデザインや絵本もカラフルな多幸感に満ちていて頬がゆるんだ。晩年の絵の、独特すぎる毒使いにあっけにとられた。たくさんありすぎてまとまりがつかない。綺麗でまぶしくて可愛らしいのに、どこにつづくかわからない落とし穴が隠れているような、不思議な世界だった。(なのでやっぱり「不思議の国のアリス」のパートがいちばんしっくり堪能できた)*1
「イッツ・ア・スモールワールド」(ユニセフのためのパビリオン。後にディズニーランドへ移設)コーナー、膨大な絵に囲まれたときのくらくら感と、ヘルメットが素敵だった。建築現場でかぶるヘルメットに、フェルト?でつくった造花やラインストーン、針金?で名前をつけたもの‥。展示解説のあちこちで、「当時女性が働くことに世間は否定的だった」的文章を目にしたのだけれど。才能があるがゆえの、旦那様がウォルト・ディズニーゆえの、それはさまざまな働きにくさがあったであろうことはなんとなく想像ができるのだけれど(実際の働きにくさの何分の一かはわからないけど)。ヘルメットにあしらわれたデコレーションは、可愛さだけでなく「非難するならしなさいよ、わたしはへっちゃらよ。でもほら、ここまでされたら微笑んでしまうでしょ?」肩肘はらない意思表明?メアリーのたくましさ、魂の可憐さに触れた気がする。まだ自分のなかで色々がこなれていないけど、とにかく圧倒されました。
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メアリー・ブレア展でだいぶ使い果たした感があったので観ないで帰ろうと思ったのだけど、乙友から薦められていたのを思い出し、自分にムチうって足を運んだ常設展も素敵だった。ブレア展がとにかくみっちりした空間だったので、単純にスコンとぬけた空気にほっとしたし一息つけ、現代美術もいいもんだな、などと和んだ(自分を取り戻せたというか)。ブレア展にこれから行く人にはお薦め*2。