エル・トポ(1970) @ヒューマントラスト渋谷

製作40周年デジタル・リマスター版

エル・トポ [DVD]

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あるべき姿以上のくっきりさに辟易してしまうのでデジタルリマスター反対派だったのだけど、「エル・トポ」のデジタルリマスター版は輪郭が明瞭で画面が明るくて、‥いま出来上がった映画みたい。すごいすごい。大興奮。西部劇やキリスト教という荒唐無稽なテーマが逆に、いつまでたっても古びないのかなあ。すこし考えを改めました。
古びない奇蹟、神聖な見世物。まぶしくて目がつぶれそうな悪夢に大満足。60席のちいさな劇場とはいえせっかくスクリーンで見ることができるのだからもう一度観に行こう‥(と思ったらこのあとはモーニングかレイトのみ?どうしよう‥)!
売店で今回のデジタルリマスター版パンフレットが売られていておおよろこび*1!大部分は写真なんだけど、公開当時のパンフからの川本三郎のテキストや、2007年にION MAGAZINEに掲載されたアレハンドロ・ホドロフスキー(監督)のインタビューなどが掲載されていてありがたい。このインタビューがかっこよいので一部抜粋。

(あなたの映画を完全に理解するには、何度も見る必要があると思いますが?)
その通りだ。そうしてほしいと思っていた。お気に入りの歌を一度しか聴かないということはないだろう。その歌は人の心のなかに深く刻まれるものだ。私も何度も繰り返して見てもらえるような映画を作りたい。見るたびに、違う作品に思えるような映画、そういう作品を私は望んでいた。

(1970年代に映画はLSDよりも、マシだと考えていたそうですが、今でもこの新年は変わりませんか?)
最近出回ってるLSDは、それほどよいものじゃないと思う。LSDの神聖さは失われている。 (中略) 聖なるマッシュルームをピザにのせて食べるなんて。もう終わっているよ。

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学生のときにホドロフスキーの「サンタ・サングレ」を見なかったら、こんなに映画を好きにならなかったと思う。幼く免疫もなかった当時のわたしは、純度のたかさにものすごく感動して、世の中にはこんなものがあるんだ!あるんだけどあるだけなんだ!わたしが見逃したらおわりなんだ!ってすごくびっくりして。そのおかげでこんな‥落ち着きのない大人になってしまった。感謝するやら恨むやら。

サンタ・サングレ 聖なる血 [DVD]

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「サンタ・サングレ」について、ホドロフスキーは「はじめて商業映画を撮った」と評していたけれど。これで商業映画‥(あっぱれ)。「サンタ・サングレ」は、愛、親子の絆、ニワトリ、サーカス、悲しみ、フリークスや贓物やタキシードなどをところせましとぶちまけた一大抒情詩。冷静に見るとすっげー無茶な話かつ、急展開に次ぐ急展開でチョット待て‥!てなるかもしれないけど(実際3度目に観たときはすこしそう思った。若いときに観ておくべき)、とにかく美しいのです。こっちもまた上映しないかなあ。‥「ホーリー・マウンテン」も上映してほしい‥。
ホーリー・マウンテン [DVD]

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やはり大昔に三鷹名画座で「エル・トポ」との二本立てで観たときは、こっちの豪華絢爛さのほうが印象的だった。へんな映画だったなー。またスクリーンで観たいなあ。(それを言ったら「エル・トポ」も、もっと大きい劇場で観たいよ‥!)

*1:このあいだKと新宿の伊勢丹に行ったら売り切れていて代官山まで買いに行ったTシャツも売られていてそれはちょっと‥。なんだよ‥