はじめての人のための岡本喜八 @新文芸坐

  

岡本喜八を愛してやまない
すべての映画ファンのために
そして、今日この日、はじめて
岡本喜八の映画を知ることになる
すべての若い映画ファンのために

長くなるのでたたみます。
この特集上映は、26(土)まであるので(26(土)は岡本みね子さんおすすめの「大誘拐」の上映)、興味のある方はぜひ劇場までおでかけください)

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初日のこの日の上映は、人気シリーズだったらしい、「暗黒街シリーズ」二本。おもしろいけどふつうのかんじ。(贅沢?びっくりさせてほしいのよ)

暗黒街の顔役(1959)

暗黒街の顔役 [DVD]

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東宝・カラー・シネスコ・110分/脚本:西亀元貞、関沢新一/出演:鶴田浩二、室田明、三船敏郎草笛光子佐藤允
暗黒街の抗争をめぐる、初のアクション映画。本作から3年連続、東宝のお正月映画の看板番組となった大ヒットシリーズ。

物語の発端になる室田は、闇の世界にいるくせに、考えが甘い、甘すぎる。まじで意味わからん。ここにつまづいて、テンポのよさにものれず。でも鶴田浩二のむくわれない感はいいかんじ。三船敏郎の役のミスマッチ(堂々とした外見とは裏腹の気の弱い役)は、おもしろいような、落ち着かないような。

暗黒街の対決(1960)

暗黒街の対決 [DVD]

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東宝・カラー・シネスコ・95分/脚本:関沢新一/出演:三船敏郎鶴田浩二司葉子ミッキー・カーチス佐藤允平田昭彦
暴力団がはびこる地方都市で、札付きの型破り刑事が大暴れ!スピーディ&コミカルな演出がさえわたる痛快アクション。

これはけっこう好き。びっくりもした。主人公三船敏郎のどっしりした安定感に対する、暴力団グループのコミカルさがいい。殺し屋部隊が(なぜか)、キャバレーで歌を歌うのだけど。♪消しちゃえ 消しちゃえ 消しちゃえ 消しちまえ♪ 死ね死ね団の歌みたい。天本英世にはうっすら愛すら感じる。

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トークショー岡本喜八夫人で映画プロデューサーの岡本みね子さん、お嬢さんで女優・喜八プロ代表の岡本真美さん、独立遊撃宣伝部の方を司会にむかえて。文字通りの、アットホーム。
さいしょの挨拶でみねこ夫人が、雪のなか、たくさんの来場があったことにお礼を述べ、「喜八の通夜の晩も雪だったんです。今日のこの雪は喜八がよろこんでここにやってきたんだと思います」。いきなり泣きそうになったよ‥。
お嬢さんの真実さんは、幼いころ、子供が見るような映画を撮らないお父さんに対して、「パパ、もっとえらくなってゴジラを撮らせてもらって」とおねだりしていたそうです。
今日上映した「暗黒街の顔役」は、みね子夫人がはじめて試写会に呼ばれて見たものの、文芸映画が好きでアクション映画を観たことのないみね子夫人は、どう感想を言えばいいのかおおいに悩まれたそうです。「暗黒街の対決」については殺し屋たちがキャバレーで歌を歌うことに対して、「喜八はお酒が飲めなったものですから、キャバレーの描写はぜんぶ想像なんです。一度くらい、ちゃんと見に行ってみたらって言ったんですけど、いい、行かない!って。まあお酒が飲めないですから、行ってもつまらなかったでしょうけど」。両方とおしては三船さんとの交流を、「お互いが貧しい頃から仲良くさせていただいていたので、いまでいう、学生時代の友人みたいなかんじでしょうか。三船さんが、海外の仕事をメインにしようとしたとき、もう便箋20枚くらいの手紙を書きましてね(ひきとめか?)。それを読んだ三船さんが、「喜八ッ!」なんて言って怒ったっていう‥。いいお友達でしたわね」。
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今回の特集名にちなんで、「はじめての岡本喜八映画としては、なにをおすすめしますか?」の問いに、
「わたしはけっこう「殺人狂時代」が好きで、‥今日の「暗黒街の対決」も、消しちゃえの歌とかあっておすすめできるし、‥でも、どれもおすすめです。どんな人にも、笑った顔・怒った顔、いろいろあるじゃないですか。そういうことです」。「喜八プロの代表らしい、模範解答ですね」と言われる真実さん。
「あえてあげるなら「大誘拐」ですね」。というみね子さん。会場から拍手があがりました。「この頃、喜八プロは深刻な経済状態で、これが当たらなかったら、もう映画は撮れないし、家も売らなくてはならないし‥。とても覚悟して作った作品だったんです。おかげさまで映画は成功して、喜八プロはそれからも映画を撮ることが出来たんですけど‥。みなさん、憶えてらっしゃるかしら、竹薮から大金が出てきた事件って、この頃なんですよ。あの竹薮、わたしたちが住んでいた家の、すぐ近くにあるんです。ニュースを見て、喜八ったら、まだ竹薮にお金があるかもしれないぞ、探しに行こう、なんて言うんですよ。みね、行くぞ!なんて。でもねえ、ニュースにもなってあんな騒ぎになって、もうないわよって断ったんですけど、ほんとうにあのあと、もうひとつ出てきたんですよねえ。喜八は、「世の中ってのはこういうもんだ」なんて言っていましたねえ。‥さすがにみっつめは出ませんでしたけど」。
かなりヘビーな状況を、いとしそうに慈しむようにお話ししてくださるみね子さん。なんか、すごいなあ。包容力なのかな。
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明日の上映作品に対するコメントを求められ、

斬る [DVD]

斬る [DVD]

「斬る」はほんとに喜八らしいシャシンだと思います。ヘンなシャシンなんですけど、たのしいシャシンです。なんでしょう、岸田森さんをかっこよく撮ろうということでスタッフが一丸となって‥。この岸田森さん、ほんとにかっこいいんですよ。森さんも、ご自分で「俺、かっこいいなあ‥!」なんておっしゃって‥きもちよく演じてくださいましたね。
ううう、たしかにこの映画の岸田森のかっこよさぱねえ!!思うツボの反応しちゃった‥(→☆
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殺人狂時代 [DVD]

殺人狂時代 [DVD]

「殺人狂時代」は、‥おもしろいんですけどクセの強い映画で‥。あの映画のおかげで東宝をクビになりそうになって‥。‥クビになったんでしたっけ?仲代達也さんをあんな役で使うなんてなにごとだ!って怒られましたねえ。仲代さんの役もおもしろいんですけど、天本英世さん、この映画は天本さんの代表作のひとつになるんじゃないかしら。
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みね子さんのお話には、監督への愛情がうんとつまっているようで、とても美しいことを聞かせていただいた気がします。感動しすぎてまんまと翌日も新文芸坐へでかけてしまったわたし(おもしろかったよ!)。
ちなみに、わたしの「はじめての岡本喜八」は「殺人狂時代」でしたとも。悔いなし!(ちなみに、わたしの「マイベスト岡本喜八」は、いまのところ「斬る」です。ほかの映画見たら更新されるかな?どうかな?)