刊本作品 −武井武雄が創った奇跡の美書たち−(再訪その2) @イルフ童画館

泊まったホテルでは深夜突然テレビが点くというサムシングを抱えながら起床。ホテルから一回駅に戻り、さまざまな武井武雄モニュメントをたのしみながらイルフ童画館へ。

午前中は、田中栞さんの豆本ワークショップ。不器用なわたしは、予想どおり先生を困らせながら*1、ワークショップ終了。 同じかたちにページを作る、そもそもそれが難しそう(今回は、先生がすでに切ってくれていた紙を使用)で、豆本づくりの道は険しい。でも慣れ、それのみらしいので、あたい、がんばる、がんばりたい‥。

おまけとして教えてもらった豆本折り紙。折り紙なのに豆本になって、ちいさくて可愛くて。まずはこいつをマスターさせよう*2

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ワークショップのあと休憩をはさんで、午後は田中栞さんの「刊本作品解説」。ご自身で製本なさる田中さんならではの視点で、武井武雄刊本作品の偉大さや、異常さや、それにしてもホチキスどめって?という憤り(武井さんのしたことを悪く言いたくはないんですけど、この美しい本の製本がホチキス留めって!)、そんなところを余すところなく。刊本作品の制作ノートを拝ませてもらったり(なんて緻密な下絵。あんなのもう下絵じゃない)(製作の原価計算表なども)、充実のひととき。田中さんの解説付きで刊本を眺めると、いろんな輪郭がはっきりして、すごく立体的に納得というか感心できるんです。興味深いお話をうかがい、満たされまくり。今日もイルフは大充実。それどころか!学芸員さんが微笑みながら、「次回の展示ではこけしも並びます」なんて言うではありませんか。イルフ、おそろしい子‥!
しかしですね。刊本作品がこの世にあらわれて、もう50年が経つので。大切に保管していても変色してしまうものがあるとか(極秘亭探訪。あの!うるわしのセロハン重ねにそんな弱点が隠れていたなんて。糊づけだものねえ。前例のないことに挑んだ勲章だと思うしかないのかしら)、じりじりするようなお話もうかがいました。今すぐどうにかしてほしい‥*3 愛しさと刹那さと心細さと‥ ものを愛する道というのはいつでもちょっぴり修羅の道だよ。

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そんなわけで(?)岡谷から戻ったわたくしが貯金を切崩し、神保町に向かったのは言うまでもない。もういっそ、刊本入れ(専用の本棚的なものがあるんですよ。クククク‥)を購入し、そこがいっぱいになったらもう買わない。そんなふうにしようかなあ。煩悩をもって煩悩を制す。制することは、できるのかしら。
NO.39【かなりやABC】(1959)

(刊本ではなく、豆本時代です)グランド孔版。
NO.139【鳥遣いの乙女】(1983)

レーザー光線カット
【友の会記念作品 刊本作品風呂敷】

刊本作品は、その手間や愛情を思えば、神保町価格でも別に高価ではないと思います。刊本作品に憧れていたという閑々亭さん(→☆)とおしゃべりさせていただいたおりに、寄木細工の「木魂の伝記」がウン万円で売られていたことを伝えると、「えっ‥。そんな実現可能な値段設定なんですか?頑張ればあの本を所有できちゃうんだ‥」。高いです。高いですが、「ね。頭に血が上って買ったコートが全然似合わなかったと思えば買えちゃうんです」。「ほんと‥。どうしましょ」。長い眼で見れば‥ コートよりお買い得かもと思ってしまうあたり。てへ。

*1:すみません‥。不器用でツメが甘いだけで悪気はないんです‥ ←あってたまるかですよね‥

*2:しかしこの日記を清書している4/5現在‥折り方思い出せるだろうか。釘は熱いうちじゃないといけないのねえ‥

*3:保存補修をきちっとするか、時間をとめるか