貸切り図書館20冊目・あがた森魚@鎌倉moln

ricohet2015-06-13
アーティストにライブ中、愛読書を紹介して貰うという本と音楽にまつわるイベント「貸切り図書館」の記念すべき20回目は今年でキャリア43年、俳優、映画監督、文筆家としても活躍中のあがた森魚さんが登場します。稲垣足穂のことなど興味深い話がたくさん聞けると思います。ぜひお見逃しなく!

「貸切り図書館」という綺羅星のような企画にあがたさん登場。ときめきすぎる心を落ち着かせ、いざ鎌倉。会場に入りステージを見るとあがたさんが用意した本のてっぺんに「絶対安全剃刀―高野文子作品集」発見。うわうわうわ、このお話聞いたことない!でもお好きよね(一瞬で納得)、「田辺のつる」について話されるのかな?すーごいたのしみにしてたのだけど、開演直前に用意された本の上にさらに数冊の本がどさっと置かれ‥。「絶対安全剃刀」が見えなくなっったのでございます。残念、「絶対安全剃刀」のお話は聞くことができませんでした。ライブ終演後に隙を待って直にお聞きすればよかったのかな。後悔先に立たず。でもとても素敵な夜でした。「貸切り図書館」素敵な企画に感謝です。

:

現在あがたさんは新作『浦島65BC』レコーディングが佳境も佳境、頭のなかは浦島でいっぱいらしく。途中、「今日は貸切り図書館ってことなんだけど‥。ここにこのまま本を置いておくので、気になった人にライブの後で各自見てもらうのはダメかな‥?(笑)」。ダメダメダメ。ダメ、絶対。まったく、こんなにたくさん本を持ってきてくれたのありがたいけど、逆に持ってくることで気が済んじゃったんじゃないかしら(汗)。全力で念を送ったわたし。
来月のクアトロ浦島ツアーに間に合わせなくちゃいけないから大変なんだろうな。でもアタイ、3月のクアトロで「7月に新譜発売のツアーやります。さっき会場押えたよ。レコーディングはこれからだけど」って聞いたときからこうなるの(大変になるの)知ってた。むしろ、間に合うんだってことに驚いてる。すごいよあがたさん!‥で、佳境なもので、髪の毛が伸び放題でこんな姿でステージに立っていいのか、でも今は髪を切るよりしなくちゃいけない作業をするべきだから、ああでも髪型は髪の毛は大切だよねって話をけっこう切々と、長く。本の話早く‥とまたしても念を送るわたし。(あ、でも自分の音楽性?ジャンルをなんて言えばいいのかいまだにわからないと言われて、「フォークもアシッドフォークもなんだかよくわからないし、歌謡曲というほど主流じゃないし流行歌というほど流行ってないし」って言ったの可笑しかったんだ。長年やってもわからないのねそうなのねって)

あがたさんのお話しされた本についてメモ
;;
エルンスト(とミロ)の画集について。エルンストの絵の匿名性にとても惹かれるというあがたさん。匿名性に惹かれるという発言が、あがたさんの表現法には遠い気がしてとても興味深かったのだけど、ちょうどエルンストの技法・フロッタージュ(10円玉の凸凹を鉛筆でこすり絵を浮かびあがらせる遊びをあがたさんもこどもの頃されたそうです)について話された後だったのでそういう匿名と思ってしまったのだけど、あがたさんの言う匿名性は「誰でもありたくない彼氏」のことだったのかも、と後で思いました。

コクトー恐るべき子供たち」。憧れの少年ダルジェロについて。冒頭の雪合戦のところを少し朗読。この文庫の帯があがたさんの監督された「港のロキシー」で(そういえば恐るべき子供たちへのオマージュラブコール映画だったような気が)あらあがた冥利につきるわねって思いながら見てました。

ジューヌ・ヴェルヌ「気球に乗って五週間」。佐藤敬子先生が教えてくれたネモ船長の冒険。大人になって新しく全集が発刊されることを知りあとがきを書かせてもらったのがこの刊だそうです。ネモ船長に比べるとあまり有名な話じゃないとこぼしていたけど、このお話映画にもなったし(しかもすごく夢のある)素敵なお話ですよう。

昔の少年漫画「ハンマーキッドショー」など。子供の頃あがた家では漫画を読ませてもらえなかったので、病院の売店で漫画の存在を知りカルチャーショックをうけた思い出を。あがたさんが「ハンマーキッドショー」と口にした途端に、そういえば昔そういうタイトルのライブイベントあったなあ!(何回かあったのかな?わたしが行った回は思いだけが先行してショーとしてはまだ発表段階にない気がしてマイナス成分多めな思い出だったんだけど、すごく大事な引き出しを開けてくれていたんだなあって思い出が走馬灯めいてまわりました)って、あがたさんのしていることってしたいことってモノスゴク一貫してるんだなあってぶれなさに茫然。

もはやテーマのような稲垣足穂について。「弥勒」「一千一秒物語」「タッチとダッシュ」の3作品が特にどうにもマスト。特にものをつくる人間には「タッチとダッシュ」と。あがたさん愛読の「一千一秒‥」には足穂本人が愛用していた足穂印のようなものが押されていて(足穂さんと直接面識はとれなかったのだけど足穂さんのお部屋に入らせてもらったことがあるのだそう)、自慢です、って微笑まれました。この本には自分でメモをしたり線をひいたり付箋を貼ったりでだいぶ手元に置かれた感があったのですが、「もっとしっかり書き込みして愛読したほうの一千一秒は北海道に帰る夜行電車に置き忘れて失くしちゃったんだよね‥」って、失くしてしまった宝物の話ってどうしてこんなに美しく胸をつくんだろう‥。この流れで「スターカッスル星の夜の爆発」を部分で歌ってくださいました。知らない方のために補足すると、これは稲垣足穂の短編小説にあがたさんがメロディをつけたものなのです。足穂さんの追悼コンサートに出演する際に歌ったのが始まりだそうです。

ガロつげ義春特集号。ガロを読んでなかったら赤色エレジーも自分のデビューもなかったのではないかと。ガロを愛読したきっかけがつげ義春ってことだったのかな?(なんだかんだ言ってあがたさんから足穂話を聞くとほわほわしすぎて足元がおぼつかなくなってしまいその後のお話があやふやだあ‥)

:

01)僕は天使ぢゃないよ 02)冬のサナトリウムサルビアの花 03)宇宙服はスケルトン 04)太陽のコニーアイランド 05)それでも僕を愛してよね 06)スターカッスル星の夜の爆発 07)後ろ姿のトナカイらしき(?) 08)ひっぴぃくん 09)ボブディラン物語 10)赤色エレジー 11)昭和ミナトマチ三番地 〜アンコール〜01)月光オートバイ 02)佐藤敬子先生はザンコクな人ですけど

いちばん最後の「佐藤敬子先生はザンコクな人ですけど」の前の「‥俺にとっては佐藤敬子先生がダルジェロ(恐るべき子供の、憧れの同級生)なんだよね」という言葉に胸が詰まり、ああ、今日はこの言葉が聞けただけでほんとによかったなあってしみじみしました。
現在製作中の新作「浦島65BC」についても、「ディランに捧げるっていうのがテーマになっているんだけど、いざ作るとどうしても足穂に捧げる部分がたくさん出てきちゃう」と言われていて、そうでなくっちゃ!胸が熱くなりました。たーのーしーみー!

:

浦島64

浦島64

ところであがたさんは「2020年まで、1年に1枚アルバム作るって決めたんだ☆ミ」そうで。これってものすごいことだと思うんです。ある程度の年齢になると、1年の早さが普通にSFじゃないですか。60を越えたあがたさんにとってはほんとに早いピッチだと思うんですけどそれを10年間やってみようって、すごいというより尋常じゃない。で、ものすごいのは、そうやってハイペースで出されているアルバムが、どれも素晴らしい作品になってるってところで。わたしは前作の「すぴかたいず」がとてもよかったのでまだ余韻にひたっていたいところに浦島って言われてもねえ‥な気持ちだったのですが、聴いたらあがたロマンここに極まれりなきらきらドリーミーな作品だったので2回ひっくりかえりました。こんなのさらっと出しちゃうなんてすごい!そしてすごいながらも集大成というか常にずっと前からやっていることだってところがまたすごい。そしてこんなロマンチックな作品に「浦島」ってつけちゃうのもすごい(もったいない)(だってかっこいいけどすごいアングラっぽい!こんなに夢見るアルバムなのにい)‥。ほんとにすごい尽くしで、うれしくてなりません。「宇宙服はスケルトン」のことを、「こんな無邪気な歌が出来ちゃった」と笑っていたけれど、あがたさんは、基本、無邪気ですよ‥。て少し、本気で。微笑ましくね。ラブ!(←無邪気がえし)