陸奥A子×少女ふろく展 〜DOKIDOKI『りぼん』おとめチックワールド!〜

2015年10月1日〜12月25日 @弥生美術館
 
 
陸奥A子×少女ふろく展 〜DOKIDOKI『りぼん』おとめチック❤ワールド!〜
1970年代半ばから80年代にかけて、少女雑誌『りぼん』で活躍していた漫画家・陸奥A子は、恋や友情に悩む、読者と等身大の少女像を描いて人気を博しました。陸奥の作風は“おとめチック”マンガとも呼ばれ、アイビー・ルックや背の高い優しい男の子は、少女たちの憧れを誘いました。さらに陸奥のイラストによる“ふろく”も熱烈に支持されました。
 本展では陸奥の『りぼん』から『YOU』までの貴重な初公開原画やふろくを多数展示し、併せて少女雑誌のふろくの変遷を約300点の史料によってたどります。

2015年の秋に弥生美術館で開催された陸奥A子×少女ふろく展。
美術館で陸奥A子だけの展示が行われる、こんな日が来るなんて。長生きはするものだなあ。
随分昔になくしてしまったと思っていたおとめちっくを愛する心が自分のなかにこんなに残っていたことに戸惑いつつ、長生きはするものだなあ(二回目)。会期中に二度行きそのたび大感動(展示替えがあるので3パターンあった。一番最初のは、すごい人気ですごい混雑、グッズ連日品切れ中という紹介を見てひるんで行きそびれた。そう、はじめは会期中に一度行けば充分かと思っていたので。一度行ったら展示替え後も行きたい!行かなきゃ!ってなった。わたしいつもスタートダッシュが遅くて後悔するんです。この歳にして日々勉強)、燃え尽きたと思っていたのに。
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陸奥A子(らんぷの本)

陸奥A子(らんぷの本)


恥ずかしながら、弥生美術館の展示後にこの本を読むまで、わたしは陸奥A子のほんとうの人気を知りませんでした。自分がりぼんを読んでいた80年代は人気が定着・安定していた円熟期で、70年代の人気は爆発的だったのね。知りませんでした。りぼんでいちばん売れた漫画が、『たそがれどきに見つけたの』だったなんて。この本でハジメテ知って心底驚いた。どうりで弥生美術館創立以来の動員数を記録‥(へ?なんていぶし銀!なんてのんきにびっくりしてた)。申し訳ないけど、80年代のりぼんっ子に知っておけというほうが無理‥!

そんなわけで、ひたすら感心しながら読みました。愛情深くてよい本です。カラーページがいっぱいなのにお値段おさえめ。単行本には収録できなかったショートストーリーをカラーで収録だなんて。ひたすらにありがたい。毎晩寝る前にながめては至福。こんな本が出たというのが非常に意義深い。さああともう一歩踏み込んで、別冊太陽でも陸奥A子ムックを出版してください‥(懇願)(もっと完璧なコンプリートも今なら夢じゃない気がして。ふろくの次号予告コーナーとかジュリーとの対談再録とか、絶対需要あると思うんだけどな〜)。
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2016年4月23日〜6月26日 @北九州市漫画ミュージアム
 

陸奥A子×少女ふろく展 〜DOKIDOKI『りぼん』おとめチック❤ワールド!〜
1970〜80年代の『りぼん』(集英社)で「おとめチック」ブームを巻き起こし、一時代を築いた少女漫画家・陸奥A子。短編を中心に発表しつつ『りぼん』のふろくのイラストレーションも手がけ、読者の好評を博しました。陸奥の活動を振り返る展覧会を地元・北九州市で開催いたします。
陸奥A子プロフィール◎
北九州市出身。北九州市内で結成されたマンガ同人グループである「アズ漫画研究会」に所属。1972 年『りぼん大増刊』( 集英社) にて「獅子座うまれのあなたさま」でデビュー。「おとめチック」と呼ばれるブームの中心的存在として『りぼん』で活躍する。90 年代以降は大人の女性向け漫画誌YOUNG YOU』『YOU』などでも活躍。近年は漫画作品に加え、フリーペーパー『ココカラ』( 東京都)での連載など、エッセイも発表している。

当初は、GW中に開催されたサイン会にもし当選したら行こう。と思っていたのですが順当に外れて。ちぇっいいよ!こちとらGW中に行くほど裕福じゃないんでい。実際6月の平日なら、GWに行く半額近いお値段で小倉に行けることがわかり、じゃあ行ってみようと小倉まで。

展示の大筋は弥生美術館と同じだったのですが、平日だったため、独り占めに近いかたちで展示をたのしめて大満足。ああ‥。来てヨカッタ‥。大きな美術館なので展示数も多く、−−『ささやくならやさしく』(単行本未収録作品)*1のカラー原画がさりげなく展示されていて、原画のまえにふつうに作品を読ませてほしいって思った。
この展示ではじめて見る付録もあった。ふろく道険しすぎる。弥生では展示されなかった‥ 30年ぶりに再会した付録もあった。感涙。目にするまで記憶の底に埋もれてるのも不思議だし、ひとめ見た途端なにもかもがよみがえるのも不思議。−− そのぶん感情を消耗してとてもつかれるのですが −− わたしは80年代からのファンだからリアル世代を名乗るの気が引けるけど、でもリアル世代がこの絵を見るとき、絵を見るのはもちろん、絵をとおして当時の自分を見たり。当時の自分の目にもどって世界を見たりで、そりゃもう疲れるのです。かわゆいふろくに歓声あげないとやってられないよって話です。歓声あげたぶん、さらに疲れてもいるのです−−、チケット提示で何度でも出入り自由なシステムがありがたかった(美術館のロッカーに荷物をいれて、展示につかれたら外出してお茶を飲み。すこし休んでまた展示にむかうの繰り返し。旅行で美術館というのは贅沢でいいなとしみじみ思った)。

企画展と常設展が別フロア別料金というのも親切。常設コーナーには漫画図書館ぽい一角があって、展示を見て読みたくなった作品がすぐ手にとれるのもすごくよかった。満喫させていただきました。ちなみに、展示で観たカラー原画の色合いがとてもふんわりとした優しいタッチだったので、「こんな薄い色、単行本で白黒になったらどう印刷されるのかな」と疑問に思い単行本で確認するとバッチリ白黒に変身していたので「昭和の印刷技術すごい!」なんて感心したんだけど、どうやらふつうに単行本用に描き直していたようです(後日、熱い陸奥A子ファンの方のブログで徹底研究?されていたのを読んだ)。
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北九州漫画市ミュージアムオリジナル展示だった、かわいいお部屋コーナー。 

これ、いま見てもふつうにかわいさにうっとりするけれど、リアル世代の方の感想で「当時はこども部屋の勉強机はほとんどがスチール製でこんなにかわいいデザインのものはなかったのでほんとうに夢のように憧れた」というのを目にして、すごく合点がいきました。昭和ってそうだったよね‥。憧れってそういうことだよね‥。
ちなみにこのお部屋のもとになった絵は集英社の記念サイトから壁紙ダウンロードできます。レッツダウンロード(→☆)。

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これも北九州オリジナルだった、雉田さんとツーショット写真を撮ろうコーナー。

‥せっかくの提案にケチをつけるようで悪いけど、なぜ雉田さん? 北九州のオリジナルグッズには雉田さんがいっぱいクリアファイルもあったし(→☆)、雉田さん推しのスタッフさんがいらしたのかしら。その方に雉田さんの魅力についてインタビューしてくればよかった(本気。ディスってるわけじゃなく純粋に知りたい)。
男性キャラが魅力的なことで定評がある陸奥A子漫画にして、雉田さんのひっかからなさは特筆すべきだと思うんだけどな。『こんぺい荘のフランソワ』って、楽子さんがヒーローで雉田さんがヒロインなんだよね。楽子さんは冒険ファンタジーのヒーローで勇敢で賢くて(自分のやりたいことがわかってるってものすごく賢いです)、そんなヒーローの理解者で可憐なヒロインが雉田さん。楽子さんぐらい独特になっちゃうと、自分の邪魔をしないのが第一条件なんだなって大人になって読み返したときに納得したもん。おとめちっく漫画深いな黒いなって。雉田さんについてはいつかもっときちんと考えたい。
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展示会のグッズ展開も弥生と北九州ではちょっと違っていて。ひらたくいえば、弥生のグッズは70年代の絵柄がメイン、北九州のグッズは80年代がメインのようでした。展示が始まる前から北九州で販売されていた絵葉書は90年代がメインみたいだし、北九州のグッズは陸奥先生の監修がはいるのかな? 昔の絵柄って恥ずかしく感じるらしいからそのせいかなあ、なんて推測。実際はどうなんだろう。
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展示の最後の部屋に、北九州での展示のお祝い?として、同郷で同りぼん出身漫画家の萩岩睦美先生と前川涼先生の展示もありました。
萩岩先生の理知的でやさしい丸みをおびた描線麗しい‥!見ているだけで優しくまあるくも理知的な気持になれそうでありがたかった。長く漫画を描いていくと描線って変化していくと思うんだけどずっと黄金期の描線キープで、すごい意志力と技術と愛を感じた。よいものを拝ませていただきました。しかし銀曜日のおとぎばなしの原画をこんなさりげなく展示したらいけない!だってたいていのお客さんは、メインの陸奥A子&少女ふろく展で感情をしぼりとられて抜け殻みたいになってるんだもの。モッタイナイヨー!(歯軋り)

モッタイナイといえば、この最後のブースには、「りぼん60周年」を祝って、創刊号から現代までのりぼん約720枚?(最初のほうけっこう欠品があったようなので実際は660枚とかかしら。ぼんやり見てたら膨大な時間が過ぎたような気がしたけど、気のせいではないね。単純計算で1枚が現れて消えるまで5秒としても、かける660で55分だもの。‥こんなのヒマな観光客(自分)しか足を止めないよ‥) の表紙がスライド?で流れていたんだけど、足をとめるお客さんはあまりいなくてこれもモッタイないでした。
わたしはアンケートコーナーの椅子に座ってぼんやり1周拝見したのですが、自分が興味あるのは陸奥A子が活躍した数年と自分が読んでいた2年くらいで、りぼん60年の歴史のなかではほんの一瞬なんですよね。それはそのまま少女期の短さのようで、なんとも切ない気分になりました。

*1:〜あなた、UFO見たことある?UFOを見たことがあるA子ちゃまがお贈りする恋のハッピーロマン!〜 北九州から帰っていちばんに78年5月のりぼんを購入したことは言うまでもない。こうして人間は駄目になってゆく‥。