マジカルミステリー・80年代作品

いま、陸奥A子のりぼん時代の漫画がほとんど絶版で入手が難しいことを考えた場合、今回のこのベストセレクションの功績はとても大きい、ような気はしますが(でも大きい&厚いから仕方ないけど、このお値段だとかるい気持では買えないから結局どうなんだろう‥という疑問はぬぐえない)、わたしの好きな3作品がひとつも収録されていないという。
ああでもそれを言っちゃあ『マジカルミステリー・インスタントコーヒー』なんかベストセレクションに入れるべきなのにセブンティーンズセレクションにも収録されてないし(ぶーぶー)、「りぼんオリジナル」に発表された作品(りぼん時代の晩年とでもいうか)はガン無視だし。やっぱりここで百姓一揆おこすしかないのでは。
いつか再録される日を願って、遅れてきた陸奥A子世代のわたしが選んだ陸奥A子80年代りぼんから選ぶベスト3。

1位 『人参夫人とパセリ氏』
80年代作品の特徴は、陸奥A子漫画世界の完成に伴うパラレル化だと勝手に思っている。恋愛においては、どうしてあの人じゃなきゃいけないんだろう、という替えのきかなさ。『粉雪ポルカ』の虹子ちゃん、『ため息の行方』の原田さん(たまたまだろうけど、『粉雪ポルカ』と『ため息の行方』で主人公の女の子ふたりの髪型が入れ替わるからパラレルワールド感がより強い)、『黒茶色ロマンス』の湯棟くんにふられちゃった女の子、 『そろそろ髪を切ろうかな』の羽生田くんなんて、世が世なら片想いされる側なのに‥なんという運のなさ(長い髪をほめた途端にアクシデントで髪を切られる羽生田君っていったい)。 『月無し夜の宇宙兎』『薔薇とばらの日々』なんてまるまるそんなお話だしね‥。 そんな恋愛のイジワルに対する決定稿、じゃないかしら。こう言われたらなんも言えねえ。ただ涙を流すのみだよ。

2位『twinkle twinkle あの娘の横顔』
マイ・ファースト・陸奥A子(はじめて読んだ陸奥A子)がこの作品。わたしの周囲(同年代)にはこの作品すごく人気があるんだけど、世代的なものかしら。夏休み最後の日に出逢った女の子、UFOのあおい光‥という80年代ジュブナイル設定。超能力でこっそり宇宙旅行という非現実性と、食べた結果は排泄物というスーパーリアリズムの同居。これをひとまとめに短編で描ききるってすごくない?偉業! この作品も金字塔‥(ため息)。 ちなみにりぼんっ子だった友人*1は、「青い○○○の話」と呼んでいた(この友人とはなかなか長いつきあいなのですが、はじめて「○○○」とくちにするのを見た。てかギャグ漫画以外で○○○、出てこないよね‥)。この話で特筆したいのは、男の子が主人公ということもあって、あわあわした絵ながら、ストーリーが特におとめちっくではないということ。少年漫画にもなりそう‥。柳沢きみおがマガジンに読み切りとして描いても違和感なさそう(細野不二彦でははまりすぎ)なあらすじ。それなのにどう読んでもA子タン世界という‥。世界の安定はんぱない‥。

3位『ステキなことばかり』
これは、眼鏡男子を入れなきゃ申し訳がたたないのと、『愛は命の花である』完結編(?)として。
『愛は命の花である』は陸奥A子作品のなかにちょいちょい登場する格言なのですが、格言すらかわゆいというか格調高く、詩の一片のようでもあります。実際自分も、なにか有名な詩からの引用なのかな?と思っていたのですが、ふつうに、日めくり格言でみつけた言葉、だそうでー・・・。 何気ない言葉が輝いて胸にひっかかる魔法。何年もきらきら胸に残る魔法。これがおとめちっくでなくてなにがおとめちっくなのか。陸奥A子作品が時代をつくった理由わかるわ‥。ただの?日めくり格言だったと知って、逆に途方もなく感動してしまったものです。この作品のなかではこの言葉がたいそうロマンチックに登場するうえに、待望の下の句(?)も披露されています。

*1:小学校の6年間りぼんを買い続けた猛者。談。漢字にもふりがながふってあるのでとりあえず読めるんだよね。小1の頃は集中力がなくて長い漫画はあんまり読めなかったけど。小6の頃はもうちょっと大人っぽい漫画雑誌に変えようかなって悩みながら、せっかくだから中学生になったらやめようって後半は我慢しながら読んでた。ちなみに一条ゆかり派で、陸奥A子の漫画は当時は「男の子がかっこよく見えなくていまいちと思ってた」そうです