この道は母へとつづく/パンズ・ラビリンス

観たい映画は数あれど、お給料日前。お財布と相談してギンレイホールへ。どちらにもあまり期待していなかったのだけど、そのせいかとても見応えがありおもしろかった。
この道は母へとつづく
わたしは子供のでてくるロシア映画が好き。かわいい子供が「ダー」とか「ニィャァー(ほんとはニィエット)」とか言うのが好き。至福(低脳すぎる)。でもこの映画はタイトルでひるんだ。「孤児院暮らしの6歳のワーニャ(ニャ!)。養子縁組が決まったが、実の母に会いたくなり孤児院をとびだす」というあらすじに対してこのタイトル。しめっぽすぎる。このタイトルで映画観たくなる人ってどんな人?原題は「ITALIANETZ」、イタリア人という意味(養子縁組を申し出る夫婦がイタリア人なので)。サラッとしておる。実際この映画はお涙頂戴的な描かれ方はしていない。むしろ「この道は母へ‥」というウェットなタイトルで観に来た人がいちばん観たいであろうシーンはすぱっとカット。潔よい。わたしが一番好きなシーンも、「愛かお金。アンタに愛は期待できないから、お金。‥でも持ってないでしょ?」と言われたワーニャがすごーくヘンな顔して笑うとこ。ほんと、ヘンな顔(水木しげるの描く絵みたい。劇場でも戸惑いと笑いがもれていた)。このすっとぼけた生命力がいとしいの。孤児院の人間関係の描き方も、そのなかでワーニャがたくましくものごとを学んでいるところもいい。好きだなあ。邦題以外はすごく素敵な映画でした。
パンズ・ラビリンス

パンズ・ラビリンス 通常版 [DVD]

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ダークファンタジーという言葉に誘われただけで予告以外の予備知識が全然なかったのだけど。これ。ダークどころじゃないじゃない。びっくりした。瞳孔開いた。鳥肌たった。酷い話だね‥。そもそもお伽噺なのにPG-12って。たしかに子供に見せたら重いトラウマ背負いそう。物語にはなにひとつうなづけないけれど(現実でしあわせになりたいので。でもこのお話の舞台は1944年だものなあ‥)、いっそすんごいおもしろかった(自分の裏切られっぷりが)。重厚な色使い・森の神秘的な様子などは大画面で見るに限るけど、血とか血とか豚さばきとかは、大画面ではおそろしすぎた(世界はそれを満喫と呼ぶ)。ミックジャガー似の女優さん(マリベル・ベルドゥ)が上手でした。
(ネタバレふくむ補足)
映画館で観て、あまりの救いのなさ・人の悪さに驚きつつ、「すんげーおもしろい!」と思ったものの、いざ感想を書こうとしたら、そんなこと書いたら大尉なみのサディストと思われてしまう‥と怖気づき、なんかすっきりしない書き方になってしまった。でも予想を裏切られる感じが実に痛快でした。(以下ほんとに結末に触れます) ファーストシーンがいきなり不吉で、予想は出来るんだけど、そこを救うのがファンタジーでしょ?ってポジションで見ていたからなあ。予想を裏切られるところにわたしの充実があったので、二度目は楽しめないかも。自分は「予想外」の出来事に飢えているのか?(先日観た映画が様式美映画だったからか?)