ドッグレッグス 第78回興行「ここまで生きる」 @北沢タウンホール

(おもしろい、という言葉の不謹慎さを噛みしめつつも→)すっごいおもしろかった。充実感とともに、ずっしり重く黒いものが胸にやってきて、離れないけど。この後味の悪さ、安易な結論を許さないことこそがドッグレッグス
対戦カードを見て、新人さんの多さにふと。今日出ていないあの選手はどうしちゃったんだろう、とさびしくなる。ETの引退を知りさびしくなる。スポーツ選手の寿命は短い。まして障害のある選手の寿命は、もっと短い。わたしはちゃんと試合を、その姿を見れているかしら。‥よおし今日はしっかり見るぞーと、気合をいれて挑んだせいか、‥ううう、この日はここ2〜3年の東京での興行のなかでも、かなりヘビーな日だった(イコール充実していたのだけれど‥)。しっかり見ちゃった。見応えありすぎ。人生見せすぎ。

<対戦カード>
1.ミラクルヘビー級選手権
● ノーシンパシー VS たれごりら(新人) ○
2.ヘビー級タッグマッチ
○サンボ慎太郎・日向野亮(新人) VS 天才まるボン・ワンミリオン松尾(新人) ●
3.E.T引退試合
● E.T VS よっこいしょ ○
4.無差別級
● 永野V明 VS 陽ノ道 ○
5.心の病 VS 難病者
● 中嶋有木 VS 関口洋一郎 ○
6.障害者 VS 引きこもり
● 澤昌宏(新人) VS 虫けらゴロー ○
7.障害者 VS 健常者
●激・大玉 VS アンチテーゼ北島 ○
8.スーパーヘビー級選手権
○ 鶴園誠 VS 大阪デビル(新人) ●
9.ミラクルヘビー級
● 愛人 VS 霊子(新人) ○

どの試合も濃かったのだけれど。
びっくりしたのは中嶋さん。鬱が自傷行為がすすんでいるらしく、リングにあがるまえに自分の胸をかみそりで傷付けていた。え?なにしてるの?まさかね‥とながめていたら、本当にそうだった。セコンドの人のタオルが赤く染まって、流血に弱いわたしは眩暈がした。なに、してたの?(涙目) リングにあがるまえにドクターストップがかかるかと思った。というかこの精神状態は、ドクターストップをかけるべきでは。でもリングに上がってくることが人生のモチベーションなの?満足な闘いが出来なくても?‥どうすればよいのかわからないけれど‥、誰が答えを出せるのかしら。誰か答えを出せるのかしら。対戦相手の関口は、ひるまず次々パンチをあびせ‥。うん、それが礼儀というか、この場合の答えなのだろうな。中嶋さんはそうして撃沈。しかし、ハラハラした。なにがおこるかわからない、それがリングの上だとはいえ。今までずっと、「試合中に事故とかおきませんように」と思っていたけれど、こういうかたちの事故もありうるのか(事故じゃないけど)。でも、ああ、中嶋さん‥。なんだろう、こういうとき、人(わたし)ってなにが出来るのだろう。
中嶋さんショックを引きずったまま終わるかと思ったら、最終試合がまた濃かった。女装かつアル中レスラーの愛人(ラマン)の、アル中の深刻度もさることながら*1、新人レスラー霊子さんのインパクトが。はんぱでなかった。霊子さんプロフィール。20代で結婚・出産・離婚を体験。女の細腕(当時は40キロくらいしかなかった)ひとつで子育てするも、40歳を過ぎてから筋萎縮症が発症。今では動くこともままならず、体重は20代のときの約3倍に。主な攻撃方法はゆっくり「のしかかる」。動きが緩慢なぶん(?)静かな迫力に満ちて、なんだかありがたいものを見た気になってしまうのは、霊子さんの表情のせいかしら。ほんのりと、微笑んでいるように見えるのも、筋肉の関係なのだろうけど。霊子さんはなぜ今、リングにあがることにしたのだろう。わからない。人の心はわからない。見える姿はわたしの目に映る姿に過ぎないのだもの。今日の霊子さんは、すごいインパクトでいろいろな問いを投げかけていた。ええと霊子さん、とりあえず。中嶋さんの衝撃を和らげてくれてどうもありがとう。
(スポーツ観戦らしく、ゴローの頑張りや陽ノ道のキックのキレの良さ、日向野の格闘センス(K談)なども日記には書いておこう。しかし人を殴るときの音って鈍く重いよね‥。あの音は、聞いたほうがいい)

*1:でもアル中なのは随分前からで、体が無理効かなくなっただけだと思う。アル中ってけっこうほんとに病気だから中毒だから、意志力の問題じゃない気がする