ラザロ

(ネタバレしてます)
【Bプログラム】【蒼ざめたる馬】 映画全体を制御できないエネルギーがうずまいていて、それがどこに向かうのかわからなくって目が離せない。なにこの緊張感。ザラザラした素人ぽい感触も犯罪映画ぽくていい。クライマックスのヒステリックな叫び声がまだ胸に残っている気がする。きもちよくヒリヒリとパワーにのされた。(わたしはこれにいちばん惹かれた。破綻してても青くさいいきおいがあって動揺させられる)
【複製の廃墟】 高揚感とどんずまり。リズムがあって面白かった。伊藤清美は何歳の役なのだ(今何歳なのかも気になる‥)。映画のなかでマユミ(主人公)が言うことはおおむね正しいのだけど、マユミの行動はおおむね正しくない*1。マユミだってわかっているはずなのに、一石投じずにはいられない原動力はなんなのか。偽札をバラまく場面は躍動感があって胸が踊るけど、虚脱感まじりというか刹那的。Aプログラム(マユミの誕生編)で、マユミの原動力が明かされる‥のかな。
【Aプログラム】【朝日のあたる家】(これは20日に観た) マユミの誕生編。マユミの健気な娘時代を終わらせたものが、愛(の終わりというか愛以上の終わりというか)だというのはいかがなものか。健気すぎないか。そうか、健気すぎるほど健気な娘だったのか。納得したようなしないような。いっそマユミはここでほんとに実体として死んだと思ったらすごくしっくりきたので、そういうことにしようかなー、と思ったら、パンフでナチュラルにそう解釈した人がいた。仲間。シャッターが降りたお店がつづく商店街、そこを横切る黒い影、ここのシーンが夢のように不穏でよかった。
レイトショーだったのでトークショー付。この日は山本政志監督。井土紀州監督に、「ラザロ、おおむねよかったよ。脚本くれればよかったのに」。南方熊楠の魅力とか、熊楠?ロビンソンの庭?の主役は当初、まだ二丁目劇場とかにでているくらいの松ちゃんを考えていたとか(オファーする前に、町蔵がいたじゃん!てなったとか)。「あのとき松ちゃんを使っていれば、『ダウンタウンを育てたのは俺!』とか言えたかもねえ」。井土監督の、「熊楠、今あるフィルムと、あとは編集でなんとかカタチにならないんですか?」という問いにキッパリ「ならないねえ」と即答したのが、わかってはいたけどなんとも‥ 残念というかそこをどうにかー!多少無理があっても観たいよ熊楠‥(このままお蔵入りになるなんて勿体なさすぎる。と思うのは現状を知らないからかしら。でも、町蔵主演で熊楠の映画を作ってると聞いて、たのしみにしない人なんていないと思うの)*2
映画が始まる前に、お客さんにどこかで見たお嬢さんがいる、と思ったら、マユミ役の東美加(敬称略)だった。髪の色が茶色いから?ふつうにかわいらしい綺麗な人だった。マユミのときとははっきり顔が違って、‥女優さんだなあ!て思った。

*1:お金持ちから横取りしたお金であれこれ買い物して、買い物したあとのお金がゆきつくところは、別のお金持ちなんだし。偽札だってそう。お金持ちがどんどんお金持ちになっていくシステムは、今のところどうしょうもない。でも格差社会って言うけれど、日本は、国レベルで考えれば加害者だし。ややこしすぎる。怪物って、マユミじゃなくてこの世の中でしょ?

*2:和歌山にある祖母の生家に熊楠が一時期下宿していたというプチあるあるがあり、まあそんなことなくても粘菌好きには神様じゃけん。熊楠の映画観たいよ(それも若き日の町蔵て!)