生誕110周年 初山滋大回顧展 @ちひろ美術館

事前に、本展覧会のプログラムにあたる、「初山滋―永遠のモダニスト (らんぷの本)」を見て、わたしの好きなモダン全開の絵(→このあたり。)(←クリックすると大きくなるのでじっくりご堪能ください)は今回は展示されないんだ‥。と少々寂しくなっていたのですが*1。いやいやいやものすごく素敵でした。こういう美しいものを見て、背筋を伸ばして生きていきたい、というか、美しいものを見るのは背筋を伸ばして生きていくのに必須だな、とつくづく思い知りました。感動したため長文です。

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今回展示されている作品を大雑把に言うと、メインは「澄んだ色調の子供の世界の絵」。印刷で見て、さほど食指を動かされなかったわたしも、原画を前にすると、その澄んだ、しんとした世界にに立ちすくみました。明るく澄んだ色調で、にぎやかな印象を受けそうなのに、なぜだかとても静か。たのしいのに孤独感がつきまとう、静かな世界にもぐってきました。
でも今回の展覧会で一番びっくりしたのは、版画のお仕事。わたしは初山滋が版画のお仕事をしていることに関して、「あんなモダンな絵を描く人でも、年をとるとこういう民芸調にうつりゆくのか(寄る年波には勝てんのか)」とどちらかというと、もっとモダンなものを描き続けてほしかった的スタンスでいたのですが。今回、「もず」の原画を見て、自分がいかに無知な子供であったのか、つくづくいやになりました*2。版画という朴訥な手法で、なんとまばゆい世界を創ろうとしていたのか。繊細なお伽世界を見て、初山滋が版画のなにに魅せられたのか、少しわかった気がしました。(もちろん売店で買い求めました。宝物にしようと思います)

もず (至光社国際版絵本)

もず (至光社国際版絵本)

それと、モダニストぽい遊び心。蔵書票はもちろん、蔵衣票なるものを作って、反物につけていただとか。正月から芸術作品‥という年賀状。自分で架空の初山神社御守札、なんていうものを作られてた、なんて知ったら。世の中全体がいとしいものに思えてしまう。なんというか熱いものに翻弄され、帰路につきました。

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ちひろ美術館に行くたびに、もうしわけなく思うこと。それは、企画展示(今回だと初山滋展)で燃え尽きてしまい、いわさきちひろのほうの展示が、流す程度で終わってしまうこと(こちらの展示のほうが混雑しているせいもあり)(どうでもいいけど1Fの奥にある展示室、ほかの部屋に比べると常にすいているのだけれど。ここを見ずに帰ってしまう人がけっこういるのでは。わたしとしてはゆっくり静かに見られてありがたいけど)。いわさきちひろの絵だってしんけんに見たいのにィ‥、と思いつつ、ついついと、今見なければ的な企画展示で燃え尽きてしまう‥。

*1:「たべるトンちゃん」の展示は一枚だけ‥

*2:まあいいわけをすれば、「初山滋―線と色彩の詩人 (別冊太陽 絵本名画館)」をうっとり見ていた頃の自分はまだ十代だったので、気が付かなくて当たり前という気もするけど。でも早熟な人は十代でも早熟‥