人のセックスを笑うな

ああおもしろかったー!切なくもどうしょうもなくもおっこちてしまう恋。当事者にしたら災難かもしれないけれど(松ケンはインタビューで「交通事故」に例えていたような)、その悩ましさこそ恋の醍醐味。なんという意地悪さ。せつなさにうなだれながら、見ているぶんにはおそろしくいとしい日々。映画観終わって、自分が恋愛の現役でないことをこれほど感謝するとは思わなかった*1。長くなるのでたたみます。
上映時間は137分。あらかじめ「長い長い」と聞いて心構えができていたせいか、おもしろかったからか、気にならなかった。たしかにヘンなところが長かったりもするのだけれど。でももっと長くてもにこにこ観ていられる気がする。
おおまかな物語の筋を聞いて、自分はきっとえんちゃん視点で見るのだわ、と思ったのだけど。まさかのユリ視点で見ることになり驚いた。永作博美効果かしら。ユリちゃん、「自由奔放なファムファタール」かもしれないけれど、実にまっとうな年上人妻の反応に見えた。永作効果でしめっぽくないけれど、けっこうウェットにもなりうる役では。「だってさわりたかったんだもん」と言う台詞も、まさかピュア全開の10代の娘に「好きになったから」なんて言えやしないわと思って、切なさにうめいた(まあ実際さわりたかったのだろうけれども)。
などと思うのは、ユリの旦那さん・猪熊さん役のあがた森魚によるものがだいぶん大きい。あがた森魚って、一般的にどんなかんじに認識されているのかしら。小学生のころヴァージンVSが好きで、ライブ観続けて20年弱であるところのわたしの認識は、「ほがらかなヒトデナシ」なんだけど‥(文字通りに受け取られると酷すぎるんだけどまあこんなかんじ。業しょったる)。わたしの脳内では、ユリが、猪熊さんを好きでいればいるほど、切ない届かない思いを抱き続けていることになり、すごく深みが出たのだけれど。でもあがた森魚ってそこまで世の中に認識されているのかなー。ぼんやりした疑問。
松山ケンイチ(の人気のせいで、楽しみにしつつも映画館に行くのがこんな遅くなってしまった。ぶうぶう)に関しては、井口監督がブログで、「松ケンの可愛らしさには自信あり!」みたいに書いていたので期待(?)*2してたのだけど、なんというか‥。大きな体をもてあまして、恋にうつつをぬかすその様子、可愛いといえば可愛いが。可愛すぎであるのだが。そりゃユリちゃん逃ゲマステ‥。キスシーンがエッチにもロマンチックでぞくぞくした。井口監督は照れてラブシーンとか正面から撮らないのかと思っていたのはうれしい誤算。
えんちゃん役の蒼井優、堂本役の忍成修吾もよかった。たくましくふんばるその様子が、恋を世界をいとしいものに見せてくれて。こちらのキスシーンもすばらしくチャーミング。登場人物にむだな脇役がないのがいいよなあ。ロバもよかったし。愛しの続編映画の世界(だっけ?)というのもいとしかった。
舞台が桐生(ユリのアトリエが西桐生)というのもうれしい。桐生は、坂口三千代の「クラクラ日記」を読んで以来、ぼんやりとしたあこがれを持っているロマンチックな土地なので。ラブストーリーの舞台に最適なのだ。
でもなんも不満がないわけでもなくて。お食事シーンがないのが残念だったり(いや、信玄餅食べたりおせんべ食べたりクッキー食べたりクッキー食べたりしてるんだけど。クッキー食べ続けたり。‥こうしてふりかえるとみごとにお菓子なのが可笑しいというか、ああそうなのか。というかんじでもある。恋愛シーンがだいぶなまなましいから、食事はおやつにとどめたのかしらん)、marimariの歌う「MY LIFE」が期待ほどでなかったり(武田カオリの「ANGEL」がよすぎたので分が悪いのもある)(ああでもわたしもフィッシュマンズハカセ在籍時がだんぜん好きなので、HAKASE-SUN起用はすごく!うれしかった‥!)(marimariはやはり佐藤さん‥の才能ってとんでもなかったんだなー。リズムキラーマシンガンになってからのCDぜんぜん聴かないさ‥)。
なんともいとおしい映画だったので、名画座来たら、また観たい。

*1:これ見て「ああ恋っていいなあ!恋がしたい!」と思うにはかなりのバイタリティが必要と思う‥。つらくても落ちてしまう、落ちたからにはベストをつくしたい、くらいかなあ。体力イルヨネ‥

*2:たしか「神童」のときに、「もっともっと可愛いのよ!」みたいに書いてらしたのだが。わたしは「神童」くらいの可愛さがベストだと思うなあ