死の棘 [VHS](1990)

端正というかきれいな映画だった。昔小説を読んだときにとても重たい気持ちになったので心配してたのだけど、清らかな作りで、観たあとのきもちは不思議と穏やかに落ち着いていた。もっとどろどろ傷つきたいと思う人もいそうだけれど、理想的なバランスだと思う。愛の映画として美しくて好き。岸部一徳*1が上手すぎるし素敵すぎる。トークショー*2行きたかったよ‥*3。勇気をだして「死の棘」を読み返したいしその前に書いた小説も読んでみたい。「死の棘日記」は読める気がしないけれどどうだろう‥(わたしは気が違ってしまう話がとてもこわい。興味本位で読んでいるうちに自分がついっとその線を越えてしまいそうでほんとにこわい。でもうっかり読んでしまうという‥)(そのてん、この映画化は穏やかでよかったです。ラストの笑顔の美しさとか。頭でっかちでもいい、こわすぎるのはいやなんです)。
どうでもいいけど以前広田レオナのインタビューで、「死の棘」のミホ役を演じてみたかった、どうして小栗監督はわたしを待ってくれなかったの‥ とか言っていたよなあと思い出して、押入れからスクラップ帳をひっぱりだして読み返した。大事に保存はしてあるけれど、いつ・なんの雑誌から切り取ったのか書いてないのがわたしっぽい(ていうかたぶん友達からもらった)。フェイバリットブックとして、「(コクトーの)白書」と「死の棘」と「コインロッカー・ベイビーズ」を挙げているのだけど。「死の棘」の感想が非常に彼女っぽい気がします。

夫の浮気が原因で、妻のミホが精神に異常をきたしていく様子が、なんとも壮絶です。夫から離れることもできなければ、受け入れることもできない。狂うしかないんです。彼女は、行き場がなくて、自分からすすんでおかしくなっていったんだと思う。まさに茨の道ですが、自分が狂うことで夫にも愛人にも仕返しをした。復讐の仕方が最高です。

*1:1990年の映画だからわりと最近なつもりでいたけど、予想外に肌がツヤツヤしていてひるんだ

*2:ポレポレ東中野小栗康平の特集上映中。ほかの作品も観たかった(観るつもりだったのに)けどもう行けない‥

*3:当日の朝まで行く気まんまんだったけど、Kのおつかいをやっているうちにどうにもならない時間になってしまい断念。思い出すと泣きそうになるので考えないようにしてたのだけど‥。嗚呼‥