非現実の王国で ヘンリー・ダーガーの謎

ヘンリー・ダーガーのいちばんのテキストは、彼の描いた絵や文章なのだから、この映画はサブテキストというか、教科書ガイド的なものかな。あまり期待しないでのぞんだせいか、けっこうよかった。けっこうしっかり、いやーな気持ちになり、満喫できた。わたしがいちばん暗い気持ちになったのは、生前のダーガーを知る人が、「なんのたのしみもない哀れな老人として見ていた」ということをけっこうずけずけ言うことで、この発言は、「でもこんな(芸術)作品を!すばらしい!」という後半の一発逆転の展開があるから口に出来るのだろうけど。他人の人生についてかんたんにジャッジをくだしてしまう狭量さ‥。そんなものが非現実の王国を造らせたんだよな‥(造れない人が大半なわけだけど)‥モヤモヤ。ああでも話の導入としてはいいのか‥モヤモヤ。モヤモヤしないでダーガーを語ることなんてできないわけだし‥でもいやなんだよ‥モヤモヤ。
動くヴィヴィアンガールズはけっこう自然にぎこちなく、可憐にブサイクでよかった。絵を描く人なら誰でも自分の絵が動くところを見たいというし、供養だよね‥。などと思いながら観ていたらけっこうこみあげてきた。供養‥。魂が救われることってあるのかな。非現実の王国。そこで救われていたのかな。救われることがなかったから描き続けたのかな。描き続けたその情熱の原動力ってなんだろう。そんなものかんたんにわかるわけなどないのだけれど(モヤモヤ)。