潜水服は蝶の夢を見る
いい映画だと思う。原作者への尊厳だとか、カメラワークの妙だとか、あざやかな色調、エモーショナルな音楽。アパートに閉じ込められた父親とか、人生とか。
ただ、奇跡は選ばれたひとにしか起こらないという現実を知っているので。−‥だからこそ、奇跡なんだけど。本に、映画になりうるのだけれど。−でもその現実を近い距離で見ていたので。いまひとつ映画のなかに入りこめず。主人公と一緒に、女たちのスカートが風にひらひら揺れるのを、ああ、いいねえ。スカートが、蝶の羽ばたきみたいだねえ。なんて見ていた。美しいほどにやるせない。