真田風雲録(1963)/みな殺しの霊歌(1968) @新文芸坐

〜鬼才・加藤泰 情念の鮮烈と奔流〜

真田風雲録 [VHS]

真田風雲録 [VHS]

真面目なんだかふざけてるんだかわからないニヒルな映画 *1。出鱈目でおもしろかった。‘異色時代劇ミュージカル’と聞いてかまえていたけど、思っていたよりミュージカルでなかった。安心したようなさびしいような。カッコよく死にたいな♪の千秋実(真田雪村)の死に方は、カッコ悪ぅ‥くない。というかこの世の死に方に、かっこいいもかっこ悪いもない。
主役の中村錦之助がほんのり関根勉に似ていたので、リメイクすればいいと思った(ミッキーカーチス役は窪塚くん)。こういう映画、今もあればいいのに*2

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みな殺しの霊歌 [VHS]

みな殺しの霊歌 [VHS]

加藤泰にはめずらしい現代劇’。現代劇だと、いかにローアングルか、ローアングルがどれほど画面に圧迫感を与えるか、一目瞭然*3 *4。しかし物語がきもちよく破綻して、最後までそのままだったのには驚いた。サスペンスって謎とき的なおもしろさがあると思うんだけど‥いさぎよすぎる。
物語はさておき、画面の作りこみ、あふれる緊張感は凄かった。悲惨な展開にかかわらず、まぶしい白黒画面。犯罪シーンの鬼の形相と、健気な少女(倍賞千恵子)と過ごすひとときの仏の表情の対比。健気な少女の意外な過去(重過ぎる。何故ここまで)。物語の展開にどーにも納得できないのに、いいもの観た‥と思わせられるチカラ技に感服。

*1:考えだすとほんとうスタンスがわからない。コメディでいいのだろうか。青春挫折映画かも。公開当時の興業成績もそうとうズっこけたらしいけどそりゃたしかに‥。再評価ってなんなのだろう‥←再評価で評価がたかまったことに懐疑的なわけではない。ありがたいと思う(でも死んでから評価されるより生きているうちに評価してほしい←加藤泰がどうこうではなくいろいろ全般)。2008年公開時いまひとつ陽の目をみない映画がこの先すごい人気になったりするのかしら、とか、興味はつきない

*2:時代劇コメディって最近ないわねと思ったけど、「真夜中の弥治喜多」とかあったや。あの映画は豪華カメオ出演に気がそれない後世の人のほうが楽しめるかもな‥

*3:普段あまり時代劇を見ないので

*4:加藤泰特集、新文芸坐でいつも好んで座る席より2〜3席後ろに座らないと見づらかった