ヴィルヘルム・ハンマースホイ 静かなる詩情 @国立西洋美術館

すごく独特の空間で、おもしろかった。緻密で写実的でありながら、現実性を無視した風景画(おもに室内画)。誰もいない部屋の美しさ。モノトーンに近い色彩。窓からさしこむ白い光は、室内の暗さを際立たせるよう。誰もいない部屋の美しさ。‥ってなに。ハンマースホイの暮らしていた部屋、おもに後姿で画面に登場する妻。後姿なら許される登場。かるがると無視される現実。ハンマースホイが描きたかった(描いた)世界はなんなのか。彼の描いた絵は、それこそ静かに、ただのぞかせてくれるだけで話し掛けてはこない。暗くて静かで歪んでて、居心地わるいのに居心地がいい。ときおりうっすら感じる、陶酔的な甘い匂い。地球が滅びちゃったあとに、存在している部屋のよう。現にハンマースホイがいなくなっても、この部屋は存在しているのだもの。不思議な空間だった(おもしろかった)。
なんだかずいぶん11月っぽい展覧会だった。でも11月ぽさってなに。考えて思いあたったのが、「ムーミン谷の十一月 (講談社文庫)」。静けさや不在がだぶるのかな。本棚からひっぱりだして読み始め、11月、はじめました。