ちば映画祭vol.5 〜かたづけない!!〜 @千葉市民会館小ホール

Kick My Sweet 13(2007)
30分/監督:村松正浩/出演:藤井翼、礒部泰宏、中山瞳、原陽子、玉井英棋、兼田佳実、河合陽一郎、平塚奈菜美、岡田美江子、青柳拓也、太田愛、菊地絵美、綿引慎也、嶋則人、大野賢太郎
僕の13才を蹴って!〜忘れられた缶蹴りを無理矢理に求めて〜 藤井は鍛え上げた肉体と情報収集能力を頼りに、彼が13才だったころの友人を探し出し、屈辱の校庭に再び集結させる。あの時終えることができなかった缶蹴りを、今こそ終えるために。果たして藤井に、次の桜の季節は訪れるのだろうか?

青年たちが12年前の缶蹴りの続きをする話。なんでそんなことしなくちゃならないの?成長しなよ。俺はこれが終わったら成長するんだ。缶蹴りに対する情熱についてなんの説明もされないなか見守るしかない迫真の缶蹴り。なんだかよくわからないままに、あちゃーといたたまれなくなったり、少し爽快になって応援したり、うなだれたり。ははは。好きだなあ。

ロング・サマー・スクール(2012)
58分/監督:村松正浩/出演:山谷武志、村松翔、Velma、園ゆきよ、田中慎也、井内友紀、由井恵理子、稲村祥子、日下穣地、内海香織、中村夏子、木村隼人、阿久沢麗加、橋野純平、礒部泰宏
2011年あの瞬間、もしも時空がジャンプしたら・・・。終わらない夏の学校。山谷の勤める町役場に対し、もう何年ぶりか、5人の青年の受け入れ要請があった。当時作成されたマニュアルに則り、廃校の体育館に5人を迎えるものの、「兄妹」を名乗る彼らの出自は不明で、一切の社会性が欠如し子供のようだった。普段からダメ職員の烙印を押されている山谷は、新妻の励ましもあり、5人を理解し交流を持つために一計を案じる。

こちらはよくわからないことがわからなくていいんだよ、そのままご覧と放り出されパラレルに身をゆだねましょうという提案。と・解釈したけどどうなんだろう。パラレル世界のラジオ体操はおおまじめにへんちくりんでなんてとぼけた。両手を前に伸ばしてぇー、ケイレンの運動ー。びくびくびくっと手を震わせる様子をながめながら、人間のすることってへんちくりんで愛しいなあとうっかり解脱しかけるのでした。おもしろかった。
ちば映画祭のいいところ‥。手作り上映祭らしく密な雰囲気で上映作品の監督や出演者のおはなしを聞けるのです。村松監督は10数人の出演者と一緒だったため「監督のお話」は少なかったけれどこうして大人数の出演者を束ねるそういう映画だもんなあと感慨深かった。この日上映した2作品のあいだには5年の月日が流れているものの奇しくも撮影場所が同じでありそこにこめた演出があること、登場人物がたくさんいるのでスポットを浴びさせることは出来ないもののそれぞれの登場人物にしっかりした(裏?)設定があることなど聞けてたのしかった。また観たくなった。じたばた。村松監督特集につけられたキヤッチコピー「すこし・不思議」といえば巨匠藤子・F・不二雄先生のことは「もちろん大好き」だそうです。そして同じく巨匠・藤子・A・不二雄先生のことも同じくらいお好きだとか。前日上映した作品はA先生っぽいんだそうで、ううう観たかった。 ところでわたしは今年のメインプログラムとなる村松監督のことを知らなかったのだけど(「シンク」という映画のタイトルは聞いたことあったけど。だけ)、この日観た二作品ともなんだかとてもおもしろくって、なんだこれって観ながらずっとわくわくしちゃって、ちば映画祭のチョイスはさすがだなあ、一日目のやつも観たかったなあ。おおいに感じ入ったのでした。

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姉ちゃん、ホトホトさまの蠱を使う(2010)
49分/監督:大工原正樹/脚本:井川耕一郎/出演:長宗我部陽子岡部尚、森田亜紀、高橋洋
姉ちゃんと俺、二人の地獄廻りの旅・・・蠱(こ)とは古代中国の呪術である。ひとつの器に小動物や昆虫を入れて殺し合いをさせ、最後に残った一匹には強い呪力が宿るという。母の葬式を終え、かつて暮らした街をぶらりと訪れた姉弟は、次第に心に巣食うバケモノ「あいつ」の幻に襲われ始める。不気味で妖しい雰囲気。姉弟の一挙一動まで気になる密度。でもちょっと惚けたところもあり、何とも掴みどころがないところも含め魅力的で"楽・し・い"。主演の長宗我部陽子さんの唄う主題歌「姉ちゃんのブルース」は必聴。......姉ちゃん、素敵です!!

これは、一昨年だったか、オーディトリウムの上映を観逃したことを悔やんでいた映画。だからよい機会といえばよい機会なんだけど、渋谷で観逃した映画を千葉まで観に行くって。なんか、これ、わたしの生活というか人生をあらわしていませんか。ちぇ。どうでもいいけど「蠱」という漢字、今回の上映でくっきり覚えて書けるようになったんだけど、今後の生活で役にたつときあるかしら。そんな学びを胸に、映画はおもしろかったです。チラシで見る長曽我部さんの顔がすこし丸っこく幼く見えるため、高校生くらいのお姉ちゃんを思い浮かべていたので実際の展開はかなりシリアスに感じられました。真剣なほうの地獄めぐりだよ。予想より大人っぽかった長曽我部さんはハードボイルドなヒロインを陰影たっぷりに演じ格好よかった。低いけれど女っぽく艶っぽい声で歌う「姉ちゃんのブルース」はほんとうによかった。わたしはテーマソングが好き。テーマソングを作ろうとする心意気が好き。そんなことを痛感しました。

純情No.1(2011)
20分/監督:大工原正樹/出演:長宗我部陽子、北山雅康
思い込みの激しい女性が主人公のコメディ。狐につままれたようなお話(タイトルも!)と『姉ちゃん、ホトホトさまの蠱を使う』とは全く違う役柄を演じる長宗我部陽子さんの魅力が......"楽・し・い"。

そんなわけで二本目の同じく長曽我部さんがコメディエンヌに扮する「純情ナンバーワン」はいろんな意味であっけにとられた。おもしろい箇所もあるんだけどそれよりなにより度肝をぬかれて。長曽我部さんが魅力的だというそのテーマはしかと受け取りました。
ホトホトさまトークは、大工原監督と主演の長曽我部さんというミニマルな人数で。そのぶん濃密なお話が伺えてー 偶然だろうけどそれぞれの映画スタイルに呼応していた。ホトホトさまの撮影地が千葉県は木更津であること純情ナンバーワンの予算が5千円だったことまで伺えてこれまた充実でした。ホトホトさまで姉弟の関係がどことなくなまめかしいのは「台本には書いてないけどきっとそうなんだろうな」という長曽我部さんの解釈に、監督は「わかってくれてる!」とうれしくなったのだそう。大工原監督が長曽我部さんに「ホトホトさまより純情ナンバー1のヒロインのほうが長曽我部さんの素に近いでしょ?」と言い、「え。あ、そう‥なのかな」と口ごもる長曽我部さんに、「だってホトホトさま(ハードボイルド)の要素はないでしょ」とたたみかけ、ハードボイルド要素がないからコメディエンヌってすごい二択と思った。ちなみにホトホトさまというのは劇中弟が考えた架空の神様であり、ホットホットサマーなのだそう。さらにちなみに、わたしはホトホトさまのおかげで「蠱」という漢字を覚えたんだけど、この字今後の人生で見ることあるだろうか。それはさておき自分含め会場にいる人みんなして「ラブ・長曽我部さん」みたいになっていた空気も忘れられない。

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2プログラムしか参加していないけれどちば映画祭は、映画好きが選んだ映画ということでかなり信頼できると思いました。ザ・手作りといったグッズ展開もいじらしくー いじらしくも、メンバーの奥様の手作りなんでしょう‥ わたしは英雄とは結婚できないわと思った(ミシン使えないから)。わたしが購入したのはTシャツのほかはブックカバーだけなんだけどすごいかわいいんだけどびっくりするくらいの低価格設定で買えば買うほど赤字にさせちゃうんじゃないかとこわくなってひとつしか買えませんでした。もし来年も売っていたらそのときは心を鬼にして大量買いしよう(おみやげ用に3つくらい買いたい)。

そう、来年も行き気まんまんであります。来年こそは千葉に一泊して満喫したいっ。