ぼくの伯父さんはヌマ伯父さん @鎌倉:cafe vivment dimanche

ヌマ伯父先生がジャック・タチについてお話をされるー。このイベントを知ったときのよろこびはとてつもなく、いちもにもなく申込。「当日は朝早いのでお気をつけください」というアナウンスに、まかせて頂戴☆と思いつつ、時間を確認すると、思ったより1時間早かった‥。朝9時始まりということを脳が受け入れられなかったのか。
昔から、休日に早起きしなくてはならないことがいやでいやでしょうがないわたし。休みの日は会社の日よりゆっくり寝たいのだもん。よろこびいさんで予約したくせに、朝早いというその一点のみでこんなに憂鬱になれるんだから、早起きって不思議‥。
しかし朝8時40分に鎌倉に着くと、すでにそこそこのにぎわいで、鎌倉の朝9時はたいして早朝ではないと思い直しました。や、どこでも朝9時は早朝じゃないんだけど、そこへ向かうために6時台の電車で出発するっていうのが早朝なのよね。
長々休日の早起きについて愚痴をはいてしまい申し訳ありません。さァトークショー備忘録行ってみよう。

ヌマ伯父先生は、期待に応えてムッシュ・ユロスタイルで登場。仕立てのよさそうなステンカラーコート、素敵だなあ。靴下はボーダー、蝙蝠傘もそえて。格好いい! 去年お店でお会いした時よりうんと顔色がよく溌剌と見えたのは、ムッシュ・ユロスタイルのおかげだったのでしょうか。
(一度スクリーン裏に隠れて登場を待つ先生のことを紹介をかねて説明する堀内さんが。「現在はコケシやマトリョーシカにのお店を」と言ったとたんつぼにはまって笑ってしまい続きを話せなくなくなる一幕もあり。和みました。春だあね‥)

ジャック・タチ再評価はそのときどきによってスパンがあるけど必ずやってくる、誰かが言い出してみんな賛同して、世の中に訴えるものを持っている。

僕が言いたいのは、タチがすごく背が高くて、むしろ大男なことですね。背が低いことをコンプレックスにしてコメディアンになったわけじゃないんです。みんなを頭ひとつ上のところから見下ろしている男の作ったお笑いだってことをね、考えてほしいんです。
ヌマ伯父先生の言葉なのですが、「ぼくの伯父さんは恰好いいんだゾ!」にも聞こえてほほえましかったです。

いつか(もうちょっと先に)ジャック・タチのロケ地めぐりツアーをやりたい。僕(ヌマ伯父)はSNSについてはあまり信用していないのだけど、年齢や性別、職業とか全然違っても、好きなものが同じ人たちが集まると通じるものがあるから。タチのロケ地って、ひとりふたりでまわってもけっこう辺鄙で大変だし、みんなでわーってなったほうがたのしいから! 男性陣はもちろんドレスコードをユロスタイルに統一してね。ふふっ‥。
うわあそれすごく素敵素敵素敵ー!お金貯めなきゃ!そして先生、女性陣のドレスコードはなんですか? (乙友の推理する女性陣のドレスコードは帽子付き60S。素敵すぎてハードル高いわ。でもたしかに「伯父さん」に出てくる全身ラベンダー色のご婦人みたいなイメージよね‥。老後だったらアリかしら)
このジャック・タチツアーのお話のときに、「今では堀内さんはブラジル、僕はロシアに(興味が)いってしまったけれど、出発点はフランスだったもんね」と明るくおっしゃったの地味に可笑しかったです。

そしてコートダジュールなどの避暑地には、江ノ島から輸入した貝細工のマドモアゼル人形が売られていたお話も興味深かったー。 言われてみればたしかにヨーロピアン!そしてこんな細かい細工、ラテン気質のフランス人はしないのだろうなあ。貝細工はフランス人の審美眼をもうならせるのね。  
 
まあこれは今年の夏からコケーシカで貝細工人形(昭和30年代のデットストック人形全6種類ですって!この美粧箱のドリーミンな様子といい、うっとりだねえ、こわいねえ)販売しますっていう宣伝もかねてるのかな‥。先生ったらいつのまにかビジネスマンみたいな折り込みを。むむ。憎いねー。

今回は、この貝細工人形登場のおしらせや、ミニカレンダー(「もう4月になるのにカレンダー?(堀)」「新年度ってことで丁度いいでしょう!(沼)」)や結婚のおしらせやマトリョーシカステッカーなどかいい紙ものお土産がたくさんいただけたのですが(ヌマ伯父イベントではミニお土産は大定番。毎回毎回かあいくて、心がワントーン明るくなるのです)、このミニお土産は、「伯父さんっていうのは甥っ子や姪っ子にくだらないちいさなものをたくさんあげるものなんですよッ」という伯父さんスピリットからであることを知り大感動。
  (この日いただいたおみやげたち。貧乏ソングソノシートは購入品)
「そうやって育った甥っ子もいつしか僕みたいに伯父さんっていわれる年齢になるわけなんだけど、伯父さんから教わったことをどうやって活かせるか‥(堀)」「勝手に活きてるもんなんですよ。気が付くと、アッこれ伯父さんイズムだ!なんて。甥っ子もいやになるなあ、なんて苦笑いしちゃうっていう。そういうすりこみです(笑)(沼)」。

「ぼくの伯父さん」にはこどもはいないんですよ。こどもをもつと、「ぼくのお父さん」になっちゃう。
「ぼくの伯父さん」学ねェ‥。ユロさんが登場するまでは伯父さんの地位は低かったですからね。ユロさんが変えた。どんなだったかって?‥醜悪な中年男性ですよ‥(自嘲)。え?「ぼくの伯母さん」?伯母さんねェ‥。女性はかわいいおばあちゃんを目指せばいいんじゃないですか?かわいいおばあちゃんになるのは比較的簡単ですよ。ええ。おばあちゃんてものがかわいいんだから。「またまたそんなこと言って。加齢学講座やってたじゃないですか〜(堀)」ああ‥あれねえ‥。加齢学難しいんですよ。女性は生涯乙女でいいんじゃないですか?それで最終形はおばあちゃん。
ええええ。伯母さん学にもっと光を!そう思ったのはわたしだけではないはず(涙)。まあ自分で考えるからいいんだけどさ。しょせん他人事だもんな。。。(ああ要するに女性には「お母さん」以外のモデルケースがないってことか‥。日本ぜんぜん先進国じゃないんだから‥)

伯父さん映画として「男はつらいよ」を挙げるヌマ伯父先生。映画としておもしろいのは渥美清にイキオイのある10作目くらいまでかな‥とは思うんだけど。と前置きをされてから、この映画のなかで、大人の時間はとまっているんだけど、甥っ子のミツオは成長していくのね。シリーズ終盤のほうはもうミツオが主人公っていってもいいんじゃないかな。これは渥美清にイキオイがないってことでさびしくもあるんだけど、「ぼくの伯父さん」として観ると味わい深くてねえ‥。ミツオが、寅さんに「会社辞めちゃおうかなー‥」なんて相談するんですよ(笑)。寅さんシリーズ、ぜひ見てください。
ジャパニーズ・ぼくの伯父さんが寅さんだったなんて‥!日本人はつらいよ。もとい覚悟を決めて寅さん入門。

南仏のバカンスのお話の流れだったかな、ヌマ伯父が少年だった頃まで?葉山?に「なぎさホテル」というクラシックホテルがあってそれはそれは素敵だったのだそう。なぎさホテルて!名前だけでときめいちゃうんだもん、素敵だったんでしょうね。もうない憧れのクラシックホテルって天上のロマンチックだ。

ジャック・タチ映画のなかで沼・堀コンビがいちばんお好きなのは「ぼくの伯父さんの休暇」だそうで。奇遇‥というかわたしも「休暇」がいちばん好きでスタンダードだと思ってて。夏の日差しとかバカンスの終わりとか他愛なくたのしいことに感傷がまじり、幸福感と刹那のなんてまぶしい時間なの‥。とにかく好きなのですが、いちばん好きなタチ映画はなあに?と観客に挙手をさせるコーナーでは、「ぼくの伯父さん」の人〜。ほーっ、やっぱり人気ですねぇ。じゃあ「プレイタイム」‥。やっぱり男性人気ですね‥ふふふ。「では「トラフィック」‥おお、これもかっこいいですからね。じゃあ「のんき大将」、「のんき大将」は人気ないから言わなくていいんじゃないですか(沼)」「やめてくださいそんなこと言うの。手を挙げてる人いるじゃないですか(堀)」 。
この日日本初公開(!)されるという『陽気な日曜日』(1935)については、「なんといっても公開当時は、日本は昭和10年代でしたからね? 現代のクオリティを求めないでくださいよ。映画っていうのは、画面に映るものから何を発見するかなんですからね。観客に託されているんですから!でも安心してください。タチの映画からなにも発見がないなんてことありませんからね?」「ええっ上映の後にもトークの時間があるの?いやだなあ、皆さんのガッカリした顔を見たくないですよ‥」ヌマ伯父先生のこんな発言はトークショーであがりきった期待値をクールダウンさせるためだったのでしょう。初期感にあふれ若干アナーキーでおもしろかったです(以下ネタバレかもしれないので文字を白くします。個人的にはお城に行かずに終わることに衝撃うけました。ほほほ‥。あとこどものかわいくも相当憎たらしい表情!)「それにしても今回の上映はプリントの状態がほんとに素晴らしいですね。これをスクリーンで観られるんだから劇場に行かないとですね。でも今回のこれDVDボックスで販売されるんですよね?いつの予定でしたっけ? えっ来年以降‥。まだずいぶん先なんですね(目に見えて落胆)。(気を取りなおして)ま、だから劇場に行きましょう!(沼)」なんかかわいらしかったのですが。

堀内さんの語る「ヌマ伯父さんとの20年史」がなかなか壮絶でおもしろかった(外野的に)。
貝細工とジオラマ?を組み合わせたワンダーランド製作をディモンシュで行い‥深夜までみんなで頑張ったこと‥。「すごくたいへんな目にあうんだけど時間が経つとまたやってみたくなっちゃうあの感じ。なんなんでしょうね(堀)」。あんなこともあったこんなこともあったと笑いながら話す伯父さんと甥っ子。今だから笑えるのだろうと思いつつ、旧友って素晴らしいと思わずにはいられない‥。陽気な日曜日素敵なイベントでしたッ。