本川達雄トークショー @池袋ジュンク堂『サンゴ礁と生物多様性のはなし』

トークショー後のサイン会のため、こちらを購入。読みやすく面白いです。後半かなり自分の考えをいれてしまったとおっしゃっていました。たしかに。そのへんも興味深いです)*1
生きものいっぱいゆたかなちきゅう (そうえんしゃ日本のえほん)

生きものいっぱいゆたかなちきゅう (そうえんしゃ日本のえほん)

(これも買えばよかった。文章は歌詞。出版社のHP(→☆)から、歌も聴けます)
新刊発刊記念トークショー。生で本川先生の講義が受けられるなんてすごいな。うれしいなあ。うれしすぎてちょう長文になったのでたたみます(無念。たたみたくない)。

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本川達雄先生の存在を知ったのは95年の教育テレビ、「人間大学(→☆)」。歌う生物学者というワンダーを友達から教えられて。歌‥自体はあの‥。すみませんよくわからなかったのだけど(歌にしたから覚えやすい!というわけでもないように思えた)、歌にしようという衝動に胸をうたれ、何回か見て、ナマコの授業のときに。えらくたのしそうにナマコと戯れる姿にガーンと来ました。すごいおひとがいたもんだ。以来一目おいているのです。
わたしに衝撃を与えたのは、ナマコに強い刺激を与えると、ナマコが溶けたようになる、という箇所。ナマコを両手でかかえ、すごい早さでこすり、ヤーッ!と黒い液体?に変える妖術使いのような姿。手を動かしながら解説をいれるためどうにもうわずる声。あふれるハイテンション。という印象だったので、このひとナマコでハイになっている‥(このひとナマコを好きすぎる)と解釈していたのですが。後日著書を読み、ナマコに特に深い愛情を持っているわけではなく(尊敬の念はお持ちだそうです)、ナマコの外見に対してはむしろグロテスクだと思っていることを知り。ナマコを素手で触らなきゃいけない!キャー・ヤだヤだ、という思いから動揺していた姿だったのではないかと考えを改めました。いま現在わたしの手元に当時のビデオが残っていないのが悔やまれてなりません(たとえ違法でもユーチューブに載せたい‥。世界中に発信したい‥。載せ方知らんけど)。なんかもう、とにかくスゴかったのです。
出会いがそんなかんじだったので、どうにもキワモノ的な印象が強かったのですが。(こんなCD(ジャケ写はもちろんご本人)まで出しているのだから、わたしの持った印象も、あながち間違いではない気もしますが)

歌う生物学

歌う生物学

実際のお姿は、朗らかかつインテリジェンスな紳士でした。「ヘタウマ」と解釈していた(すみません‥)歌も、ふつうにお上手でした。朗々と歌い上げる姿と、なにより発声が上品でした。お話にもかなり感銘を受けましたが、おもに、生物学概念からはずれたところに感銘を受けました。

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今回のトークテーマは、サンゴ礁(と生物多様性なのだけど、サンゴ礁自体が多様生物の宝庫なので、主にサンゴ礁の話でした)。サンゴ礁から地球温暖化が見え、地球温暖化から現代人がとるべき道が見える(サンゴ礁を守る生活がどうあるべきか、ということがある程度提示できるから)。なるほどなぁ、と思いながらも、それは科学の領分なの‥?と若干の混乱。中1のとき、「科学と哲学は切り離して考えろ」と教わり、それもそうだと納得して生きてきたからなあ。逆に言うと、学生時代に本川先生に出会っていたら、今とは全然違う目線で科学を見ることができたのだろうなあ。それはそれで大変そう(切り離して考えたほうがラクそう)だけれど、「突き詰めると本質はたいてい似ている」っていうしなあ。‥科学は世界観を与える、ていう考えだって書いてあったしなあ。世界観って哲学かもしれないし。うむ。‥このへんは一晩考えて気持に整理をつけて。教養としての生物学は、哲学と分けるべし、趣味としての生物学は、好きなようにするがよい、ということになりました(わたしのなかで)。
テーマに沿って歌も披露してくださったのですが、歌が生まれる経由について、「サンゴってすごい!エライ!尊敬しちゃいますね。褒め称えたいですね。というわけで誉め歌」とおっしゃったのにはウオーと思いました。誉め歌!(ウオー!) そうか、そうだったのか。生物多様性についても、「好き嫌いじゃなくて、相手のことを知ると、認めると、尊敬の気持がわくんですね。尊敬の気持があれば、一緒に生きてゆけます」みたいにおっしゃっていて、うーむこれって生物学だけじゃないよなあ、耳が痛くもあるよなあ、とか。
トークのメインはサンゴ礁についてなのだけど、著作を読んでいただければくわしいことわかるのでそれは書かずにおきます(えー)(だってすでに相当長文)。サンゴ礁についてわたしがなにか書くとすれば、「本川先生があそこまで綺麗とおっしゃるんだから、わたしも沖縄でダイビングとかするべきだろうか」と本気で考えだしている、ということでしょうか。だって「見ないと人生損してる」みたいなことおっしゃるんだもん(まずちゃんとその目でその場で見ないと愛は生まれない的なことも)。あと、お子さん二人をのびのび沖縄で育てたら、成人して、今は二人ともインドの田舎で暮らしている、とおっしゃったのもツボでした。いろいろおもしろかったです。
(こんな長文読んでくださった方(いたらありがとうございます)は、もう、直に本川先生のHPの「本川達雄について」の文章を読んだほうがいいと思います。すっごくおもしろいし感動的だから。ビバ、ナマコ)

*1:本川先生のサインは筆ペンであります達筆であります