おサカナゼリーとわたし(敗北)

私はお前にこんなものをやらうと思ふ。ひとつはゼリーだ。ちよつとした人の足音にさへいくつもの波紋が起り、風が吹いて來ると漣(サザナミ)をたてる。色は海の青色でーー御覽そのなかをいくつも魚が泳いでゐる。

そういえば和菓子、水羊羹などのなかにおサカナをひそませた涼やかなものはよく見るけれど。ゼリーのなかのおサカナって見たことないなあと思いたち。ならばと作ってみました。こういうこと考えるのってたのしい。考えているあいだは実にたのしかったのだけど、実際出来上がったものはつまんなくって不完全燃焼。まぁ、小説のなかでも、「まだ出来上がっていない」ので、未完成こそあるべき姿なのかもしれないけれど。でも、いつの日か、納得のゆくおサカナゼリーを作ってみたいなあ。

まだ出來あがらないから待つてゐるがいい。そして詰らない時には、ふつと思ひ出して見るがいい。きつと愉快になるから。
      〜 梶井基次郎 城のある町にて 〜(→☆

檸檬 (集英社文庫)

檸檬 (集英社文庫)