ぐるりのこと。(2007)@新文芸坐

たのしみにしていた橋口亮輔の新作。たのしみにしてたのに、Kと行ける日を都合つけてたら見そびれてしまったので、アリガトウ新文芸坐。朝9:45からの回なのに立ち見が出てた。盛況。新文芸坐らしく(?)年輩の方が多かったのがなんだかよかった。

ぐるりのこと。 [DVD]

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期待どおり、丁寧につくられたじんわりいい映画。やさしいだけでなく残酷な面もあるのが、こわいけれどよかった。カナオを演じるリリーさんの、演技というより存在感?たたずまいがリアルでよかった。中年のぽっこりしたおなかのやさしくだらしない説得力。木村さんが演じる翔子の性格には、あまり共感できる箇所がなかったのだけれど、泣きじゃくる翔子につられて泣いちゃったりして、泣きながら、さびしさのかたちは誰でも大差ないのかしらん、なんて思った。この二人が、お似合いなのか、相性がいいのかは、実のところよくわからなくて、でも、二人で生きてゆくことにする、その姿が感動的でした。人生の数だけドラマがあるよねえ‥。
いろいろな設定が、ふたりの性格に対して意味を持ち、世界に奥行きと説得力がある。たとえばカナオの法定画家。実際起きた事件をはさむことで十年という歳月に現実味が増すし、精神のバランスを失った人の姿に世界の危うさが垣間見えるし、こんなつらい職業をしながら*1、そのことを特に語らないカナオの性格がぼんやりわかる。翔子の複雑(?)な家庭にしても、こんなだからきちんとしなきゃ、と強く思ってしまうのね、と切なく思ったり。この映画を観たたいていの人は、それこそ自分のまわりにいるあの人のことを大切にしよう、と思うはず。ラブストーリーはこうでなくっちゃ。(ラブストーリー?だよね?人生についての)

*1:まあ、どんな仕事にもつらい側面はあるのだけれど。それにしても男の人って、めったに仕事の愚痴言わないよね。なんで?