イジー・メンツェルに乾杯! @早稲田松竹


夏休み前に「英国王」を観て、この監督のほかの映画も観たいと思ったところだったので(→☆)。早稲田松竹はつねにさすがだな。

【スイート・スイート・ビレッジ】

1985年/チェコ/102分/カラー
プラハの南のクシェチョヴィツェ。自然も人もスイートな、心はいつも春の小さな村だ。でぶの運転手パヴェクと、のっぽでとんまな助手オチクが今日も仕事に出かける。
個性豊かな名優ぞろいで笑いが笑いを小気味よいテンポで増幅しつつ、自然と人間に対する愛をさらりと心に残す。本国チェコスロヴァキアで記録的な大ヒットとなった本作。チェコ映画独特の人なつこいユーモアがたっぷり。1988年、日本で初めてのメンツェル作品として公開された。
【英国王 給仕人に乾杯!】

2007年/チェコ・スロヴァキア/120分/カラー
メンツェルが久々に発表した最新作は、小さな国で給仕人として生きる小さな男ヤンを主人公に、軽やかな語りくちと甘美な映像美でチェコの激動の20世紀現代史が展開する。愛と死、どんでん返しの人生が見たものとは?
原作の題名、そして映画の原題は<私は英国王に給仕した>。だが、チェコ人が英国王に給仕するなどということはありえない。この言葉を発するのは給仕長スクシーヴァネク氏。ヤンがあまりにも自分の給仕芸に感嘆するので、“私は英国王に給仕した”人間だから、と納得させるのだが、この言葉はまた、物語が展開するナチス占領下の時代において、ドイツであれソ連であれ、支配者が激怒する不埒な抵抗精神の表明だった。 (早稲田松竹HPより(→☆))

「英国王〜」がかなり皮肉色の強い印象があったので、「スイート・スイート・ビレッジ」なんて言われても、ちっとも心を許せなくって。館内に貼ってあるチラシに書いてある「人生のよろこび」なんて言葉も、もちろん信用できなくて。
でも観ていたら実際そのとおりだったのでびっくりした。(まあ、スイートと言うには甘味が足りないが。わたし的にはこれくらいがちょうどよい) ちいさな微笑みとクスクス笑い、それがつくりだすグルーブ、つむいでゆく人生のよろこび。‥素敵な映画じゃない。びっくり。心地よい風のような映画だった。
地味に驚いたのが、そう思いながら「英国王〜」を観たら、なんだか‥。前に観たときはシニカルさばかりが目についたけれど、ぺしゃんこにされながらたくましく生きるバイタリティに人間味というかあたたかさがある‥ような‥気が。最後だって、ずっと気になってた風にお釣りを渡すし。うわあ、ちょっとした角度でこんなに印象が変わっちゃうとは、自分の感じ方の頼りなさにびっくり。びっくりというかちょっとショック。でもまあ、これだから面白いのだと思うしかない。

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スイート・スイート・ビレッジ余談:映画好きのオチクが、ある日村の映画館(公民館?)で楽しそうに見ているのは、チェコアニメの金字塔(とわたしが決めている)「ぼくらと遊ぼう!」。「ぼくらと遊ぼう!」のファンなもので、スクリーン越しのスクリーン越しでもあのクマたちの姿が見られてうれしかった。オチクが楽しそうに見ているのもうれしかった。あのクマたちはチェコの人びとに愛されているのねえ(満足)! (しかしがオチクは若干うすのろであるという設定があり実は気が抜けない。ほかの観客も子供だったような。まあいいやチェコの子供たちに愛されているのだ)/余談2:1985年の映画なのだけど、チェコののどかな田舎町にも、ニューウェーブの波は来ていて。パヴェクの息子役が意味なくああいう(ニューロマ風の)ヘアスタイルで、「おお‥!」と思った。
英国王 給仕人に乾杯!余談:動乱のチェコ史のなか、「これからは紙幣の価値がどうなるかわからない。お金を集めてもしかたない。これからは切手だ。切手を集めるんだ」。この教えに従って、切手を集める(というか‥ムニャムニャ)する主人公。ムニャムニャはさておき切手を集めるとはタイムリーなのでつい身をのりだす。「この切手一枚で、ホテルが買えるのよ」。いろんな意味でお伽だなあ。このあと運命が急降下するけれど、詳しくは映画で。/余談2:ヤッター!秋にDVDが出る‥!(買う気か自分。そんなに好きか、盛りが)。