あがた森魚ややデラックス(2009) @シアターN渋谷

監修:森達也/撮影・編集・監督:竹藤佳世/出演・あがた森魚鈴木慶一矢野顕子久保田麻琴緑魔子/90分
 
2008年8月、北海道・釧路。まもなく還暦を迎えるシンガー・ソングライターあがた森魚の、またしても無謀なチャレンジが始まった。日本最北の地から、南は沖縄・石垣島まで全国67箇所を、たった1台のキャンピングカーでめぐる、さすらいのライブツアー。 留萌、小樽、青森、函館、横浜…様々な土地を漂流するように生きてきたその人生をなぞるように、車は波瀾万丈の旅路をゆく。行く先々、畳の上、テーブルの上、あがた立つところがいきなりステージと化す。熱く語り、はしゃぎ踊り、酔いつぶれ、怒鳴り、ちょっとだけ泣いた。奔放すぎる生きザマと、心に染み入るメロディ。音楽からもはみ出してゆく、剥き出しのあがた森魚が見えてくる。(→HP

何年あがたさんを追いかけていると思っているのよ*1、そんじょそこらの失態では驚かないわと思っていたけど、自分の主張を通すため大声で怒鳴る姿には少なからず動揺。だってふつうにガラ悪い。でもどんな人も自分の世界を守るためにはこうしてふんばるところはふんばらねばならんのだと、漂泊者あがた森魚でさえそうなのだと思い、「生きていかなきゃね」のきもちが強くなった。
暴走と乱調を繰り返しながら綺羅星のような唄を唄い続けるあがたさんは、あらためてすごいな(業が)。かっこいい。これからもずっと輝きつづけてください。

この映画をたのしみにしながらも今日まで観るのを待っていたのは、どうせだったらトーク&ゲストが楽しめる日がいいなと思って。この日のゲストは前野健太×竹藤監督。前野さんがあがた森魚のカバーを演ると聞いてたのしみにしてた。それにしてもなんで前野さん?「共通項は‥。ボブ・ディラン好きですかねえ。僕は好きっていうか、真似してるんですけど」。映画を観て印象的だったのは、ソロシンガーというか一人で唄うというその姿勢について。あがたさんの唄世界について、考えれば考えるほどとらえどころがない、的なことを言っていた。竹藤監督にしてもこの映画を作るとき、膨大なフィルム(素材は700時間あったとか‥)のなかからどうやってかたちを作るか。悩んで、説明はやめて、ただありのままを見せることにした的なことをおっしゃっていました。竹藤監督の「こういう60歳ってどうですか?」という問いに、「ひとりでその土地に行って唄を唄うというのは、理想ですね」。あがたさんのカバーは「大寒町」でした。そう来たか(ナイスチョイス)。ご自分の唄からは「青い部屋」。あがた森魚友部正人のCDを聴いていた21歳のころに作ったものだという説明?を添えて。そういえば前野さんの初期の唄って、いつの時代の歌だかわからないものが多い気がするのだけれど、すこし(ベルウッドが)影響してるのかも。
実は上映前、シアターN内にあがたさんの姿を発見して、「来ちょる‥」と思っていたのですが、完全なサプライズだったそう。終盤突如ステージ(?)にあらわれたあがたさんに、「はじめまして‥」と挨拶をする前野さん。あがたさんと前野さんとのツーショットは貴重な気がして、思わずケータイを立ち上げて激写、したのだけどボケちょる‥。しかも後輩をシめる先輩(あるいは説教中)のような図になってしまった。

「前野さんを見ていると、昔の自分を見ているよう‥。長く唄を続けていると‥こんなオヤジになっちゃうかもよ〜(笑)」。「僕が君くらいの年齢のときに観に来てくれたお客さんが、歳をとった今、また観に来てくれて‥。そういうのが映っている映画です。長くやっていくといろいろあると思うけど、まあ、頑張って」。実際はシめてなんかいませんでしたよということで。

*1:こたえ:20余年