十六歳の戦争(1976)/妹(1974)

70年代の青春 鬱屈と混沌と @シネマヴェーラ

十六歳の戦争 [DVD]

十六歳の戦争 [DVD]

監督・脚本:松本俊夫/共同脚本:山田正弘/音楽:下田逸郎/主演:秋吉久美子 下田逸郎 瑳峨三智子 佐々木孝丸 ケーシー高峰
実験映画で有名な松本俊夫が、戦後28年目の慰霊祭を背景に、男女の姿を通して豊川海軍工廠壊滅の悲劇を浮き彫りにした問題作。 アメリカ軍の爆撃で命を奪われた軍需工場の勤労女子生徒たちの慰霊のため地方自治体が出資したが、公開が2年も延期されたといういわくつきの作品でもある。

チラシの解説を読んで、めんどくさそう・難解かも、と思っていたけどおもしろかった。反戦映画というよりリリカルなファンタジー映画(だからわたしは好きなんだけど、だから公開が延期されてしまったのねきっと)。天井のやぶれた廃屋や草いきれや蜃気楼など、画面に充満する夏の匂いも美しかった。

妹 [DVD]

妹 [DVD]

監督:藤田敏八/脚本:内田栄一/主演:秋吉久美子 林隆三 吉田由貴子 吉田日出子 伊丹十三 初井言栄 片桐夕子
赤ちょうちん』に続き藤田敏八秋吉久美子主演で描く異色の青春ドラマ。 再び、かぐや姫の曲をモチーフにしている。モグリの引越し屋をやっている秋夫のもとに、同棲相手・耕三と別れた妹のねりがひょっこりやってくる。とりあえず一緒に暮らし始めた二人だったが、ねりの家出と時を同じくして耕三が姿を消したことが分かり…。

ながいあいだスクリーンで観たいと思っていた『妹』。なんで観たかったかというと、(1)母が林隆三のファンだったので、この映画がTVにかかるたびに見ていたのだけど「ひとりで見たい」と子供と一緒に見ることを拒んでいたから。(2)内田栄一が脚本だから*1
そんなことから、「林隆三ってかっこいいの?」という疑問と内田栄一テイストを探しながらの鑑賞。林隆三のかっこよさは、わかるようなわからないような(母さん‥)(映画のなかの風景が、早稲田、高円寺、鎌倉と、母にゆかりのある風景が多かったので、どんなふうに思いながら観てたのかなあと気になった。もう聞けないもんなあ)。内田栄一テイストはむんむんでうれしかった。都電の見える景色、よくわからない妹「ねり」(秋吉久美子ってすごいなあ‥)(片桐夕子も演技が懐深くてよかった)、薬の味のする炭酸飲料。粗暴な手触りも愛しくおもしろかった。「バージンブルース」も観なくては。
(ひとつ気になったのだけど、かぐや姫の「妹よ」をモチーフにしてこのあらすじってどうなんだろう*2‥)

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映画とはまったく関係ないのだけれど。映画が始まってしばらくしたら、靴を脱いではいけない人が靴を脱いだニオイが漂ってきた。苦しいわやるせないわ、どうしたものかと考えたけれどどうしようもないので、この混沌が70年代気分を高めんこともない、と無理やり自分を鼓舞させてのりきった。苦しかった。(この状況で観ておもしろかったというのは、そうとうにおもしろい映画なのではと思わんでもない。二本とも)

*1:04年にラピュタのレイトショーでかかったとき、丁度旅行中でくやしかった

*2:南こうせつに「妹よ おまえは器量がわるいのだから」と歌われるとなんとなく屈辱