@横須賀美術館

【手のひらのモダン―『コドモノクニ』と童画家たち」】 
 
『コドモノクニ』は、文化の大衆化が急速に進んだ大正期の風潮のなか、鷹見久太郎が経営する東京社(現・アシェット婦人画報社)から大正11(1922)年に創刊され、昭和19(1944)年まで刊行された子どものための絵雑誌です。子どもの情操には最高の芸術が必要であるという考えのもと、教育学者の倉橋惣三、詩人の北原白秋、野口雨情、作曲家の中山晋平、そして編集主任に和田雅夫といった各分野における当時の俊英たちが『コドモノクニ』には集結しました。また、子どもたちへの視覚的な効果を重視し、絵画主任となった岡本帰一や創刊号の表紙を飾った武井武雄をはじめ、清水良雄、川上四郎、初山滋、深沢省三、村山知義といった実力ある画家たちが誌面を彩りました。
この展覧会は、日本における絵雑誌の傑作といわれる『コドモノクニ』の芸術性と、そこで活躍した童画家たちを紹介しながら、絵雑誌という子どものための美術から近代化していく社会の様子を見ていこうというものです。
子どもたちの手のひらで繰り広げられた夢の世界は、大人たちが抱いていた夢でもありました。近代を代表する文化人たちによってつくられ、子どもたちの手のひらで繰り広げられた「モダン」な世界を、絵雑誌『コドモノクニ』と童画家たちの原画作品を通してご覧いただきます。(→HP

案内文にあるように、まずかるく『コドモノクニ』の概要を見せ、各童画家ごとにその世界を見せ、最後に『コドモノクニ』の終わってゆく様子*1を見せる、といった展示内容。各童画家のなかでもわたしの大好きな初山滋の展示が充実していたので天にものぼる気持ち。というか若干のぼった。だってだってだって。夢のなかでもこんな美しい色彩には出会えないのに、いま、それが目のまえにあるなんて。何十年もまえからあるなんて。これが平静でいられましょうか。「春の日」「おたまじゃくし」「蝶サン〜」などの『コドモノクニ』からの抜粋作品の可憐さに溜息。「かあさんとわたし」の幸福な時間を結晶化させた世界の静謐さに息をとめて目頭を熱くして。素敵な絵を見せてくれてありがとうの気持ち。
各童画家のコーナーを充実させてくれたことはすごーくうれしいしありがたかったし、実際初山滋のところで大感動したわけなんだけど。‥欲をいえば「特に有名な画家ではないけれど、コドモノクニ、こんな素敵な絵もありました」みたいなコーナーが欲しかった。まあ展示スペースと集中力には限りがあるから「なにをどこまで」というのは難しいのだろうなあ。むう*2

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横須賀美術館に来たら、そりゃあわくわくして谷内六郎館も。いつ来ても原画が見られるって、なんて贅沢なことなんだろう。贅沢をさりげなく提供するところが、にくいぜ横須賀。文化だぜ。今回の展示は1969年代の、週刊新潮の表紙たち。いちおう時系列に分けて展示しているのだけど、一見したところ時代とか、あまり関係がない‥このマスターピースっぷりはすごい。
ときどきコラージュをとりいれたりしたのは、毎週の作業だもの、新鮮な気持ちを忘れないためかしらん。レースを貼ったりファスナーを貼ったりするわかりやすいコラージュにまぎれ、わらのようなもの(ほんとになにコレ‥)を貼った絵があり‥。これ、印刷に出たんだろうか‥(でもその心意気が大事)。毎週毎週のことだもの、今週は絵より言葉のほうが雄弁だな、という回があったりするのがほほえましい(谷内さんの文章もすごく好き)。
(どうでもいいけれど以前の展覧会で見た「蜃気楼」「かげろう」(たしか‥)という絵についていた言葉がすごく面白くて。また読みたいのだけど新潮文庫から出ている「谷内六郎展覧会」には収録されてない‥。いつかまた出会えるときを待って、さまよってます。週刊誌だと年間約50枚が25年間続いたのだから1300作品余りあり、‥いつ出会えるのか、どうしたものか。あのときせめて年代だけでもメモしておけばよかったなあ。「蜃気楼」「かげろう」に会うためには、ここにこうして年に4回(展示が変わるたび)来るしかないのかなあ‥。せめてこの美術館がもっと交通の便のよいところだったら‥)

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余談。この美術館に行こうと馬堀海岸駅前のバス停に並んでいたら、かるくヨッパライ風のおじさんが声をかけてきた。「お嬢さんどこ行くの?美術館?美術館ならあっちから、送迎バス出てるよ」。あらご親切に、ありがとうございます。嬉々として乗ったその送迎バスは、近隣のスパホテルの送迎バス‥。これはウラワザ?つうかおじさん!わたし下手したら捕まりませんかね(汗)。

*1:やはり戦争ー。なんともはや

*2:そういえば図録には今日展示されてない絵も収録されているけれど。期間中に展示物の入れ替えがあるのかなあ。村山知義のたまねぎさんの原画見たいよう‥(三匹の小熊さんも)。回顧展までオアヅケか