茂田井武展 @神奈川近代文学館

−子どもたちへの贈りもの−
     
画家、絵本作家・茂田井武(1908〜1956)の作品には、子どもたちへの優しい愛がこめられています。
茂田井は自分の幼い日々の懐かしい思い出や海外旅行の体験をもとに、光り輝く不思議な世界や夢の物語の数々を描き出して行きました。 2008年に生誕100年を迎えた茂田井の作品は、数々の画集や複刻版の刊行によって新たな脚光を浴びています。
本展では、幼少時代への郷愁を描いた作品、絵本や児童雑誌など子どもたちへ向けて描いた挿絵原画、我が子のために描いた作品などを中心に、「子ども」という存在に無上の価値を見出しその純真さをテーマとした茂田井の絵画作品約100点を展示します。さらに茂田井の日記や関連書簡などから垣間見える創作の背景も紹介します。(→HP

昨年ちひろ美術館で開かれた展覧会の巡回展かと思ったけど違った。文学館の展示らしく、絵画以外のものが充実(絵画も充実してるのだけど、メインはちひろ美術館から借りたもの(昨年の展示と同じ)。今年もあの絵に出会えるしあわせ。体と心に光をとりこめるしあわせ。とはいえ文学館、絵画展示には向かないつくりというか、原画がそこにあるのに、50センチも離れた位置から鑑賞というのはかなりじれったく‥(うがああああ))。
はじめて見る展示物がたくさんあり、わくわく息をのんだ(本?の一歩手前の絵冊子が充実していて眼がよろこんだ)。人間像を掘り下げるようなつくりも素敵だった。
谷内六郎茂田井武にあてたファンレター、1954年、まだ絵を描く仕事に就いていなかった谷内青年の憧れの人に宛てたお手紙の青いどきどきは読んでいるわたしまでめまいをおこしそうだった*1。茂田井さんもお返事をだし、数回お手紙のやりとりがあったのかな、56年、すでに絵を描く人となった谷内さんのお手紙、ここでやりとりが終わってしまう(茂田井さんの体調とか色々‥)のが残念でたまらないながらも、六さん間に合ってよかったね‥などと胸を熱くする。最後に手がけた装丁本とか、文学館らしい切り口にうーむと思ったり(表紙は間に合ったものの中の挿絵は間に合わず、友人の童画家が手がけ、一部絵でお悔やみを語ったりしている)。内宇宙の充実すごい。
これは反則だろうと思ったのが、最後の最後に飾られた武井武雄の弔辞。ふつうに泣きますて。

「芸術は人だ」ということを童画で見せてくれたのが、茂田井君、あなたです*2

茂田井武のつけていたメモ?の

絵ハウソヲツカナイ ウソヲツクコトノドウシテモ出来ナイモノデアル

と呼応しているというか‥、わかるひとにはわかるのだなあ。じんとくる。
茂田井メモのなかから、印象的だった言葉をメモ。

「今」ト言フモノガ一番深イ夢デアルカラ 
「今」ガ一番苦シク楽シク マタ退屈デアル 
コノ苦シサ コノ楽シサ コノ退屈サガ 夢デアル 
ドノヤウニ劇シクトモ 実ハ静カナ深イ夢デアル

人一人ノ中ニハ無限ノ広大ガアル

はるばる横浜まで来てよかった‥(放心)。

*1:「先生の絵は色々絵本で見たり雑誌のさしえでみたりして一番好きです」。谷内さんの手書き文字が、またうそのないかんじで実にまっすぐ心にとびこんでくる‥と思うのはファンの思い入れか

*2:このあと、あなたの絵の素晴らしさはあなたの人柄の素晴らしさそのものです、などと続く