悪名(1961)・続・悪名(1961) @新文芸坐

〜生誕80年 勝新太郎VS若山富三郎 映画道を生き抜いた二人の名優に捧ぐ〜

数年前『のんちゃんジャーナル〈2〉 (オリーブの本)』を読み返していたときのこと。20数年前の連載時から、単行本になってから、何度読み返したかわからない『のんちゃんジャーナル』なのに、そのときハジメテのんちゃんが、昔の日本映画を紹介していることに気がつきました。いわく、「『悪名』シリーズはかわいい」−。

今まで気付かなくてゴメン‥。読みとばしたわけではないのに、日本の古い映画に興味が持てなかったから、ただ、目の前を、通り過ぎていったのね、悪名。今までゴメンと思いつつ、のんちゃん、10代の娘っこ(オリーブ少女)に「悪名」は早すぎるでしょう‥。まあいい、もはやオリーブ少女ではないわたくしは、いそいそと悪名を観にでかけたのです。

 悪名(1961)

悪名 [DVD]

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監督:田中徳三/原作:今東光/脚本:依田義賢/撮影:宮川一夫/出演:勝新太郎田宮二郎中村玉緒・中田康子・水谷良重浪花千栄子
時代劇で低迷していた勝と端役で行き詰っていた田宮の突破口となった本作。惚れた芸者を足抜けさせるため奔走する、勝の女に弱い朝吉と田宮のC調なモートルの貞の掛け合いが痛快!

若き日の勝新が、美丈夫といった、いーいお顔なのは存じておりました。かっこいいなあ、勝新。しかし田宮二郎がこんなにイキイキした役者さんだったとは知りませんでした。チャームよ!二郎。そんなふたりをとりかこむ登場人物もそりゃもういいお顔の人たちで、しっかり者かつちゃっかり者の中村玉緒はちょう猛禽。このひとにならステッキで殴られてもいい‥(かなあ。けっこう痛そう)浪花千栄子山茶花究の至らなさったら、ペーソスあふれすぎ。どいつもこいつもあざやかだなあ。みとれるなあ。

続・悪名(1961)

続・悪名 [DVD]

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監督:田中徳三/原作:今東光/脚本:依田義賢/撮影:宮川一夫/出演:勝新太郎田宮二郎中村玉緒・浦路洋子・水谷良重中村鴈治郎
親分の困窮を知った朝吉は義理を果たし、足を洗おうとするが……。雨の中で貞が襲われる場面は時間の都合上、カメラの宮川の苦肉の策で撮影所内で撮影されたが、一級の名シーンとなった。

なんて、いい気分でいたのに。中盤からの展開に、ふいをつかれすぎた。やけにシリアス。どうしちゃったんだろ、とハラハラしてたら、(以下ネタバレしますね) 勝新赤紙はくるわ、田宮二郎は死んじゃうわ。どうなっちゃうんだろうと思ったところに、絶望した勝新が絶叫して幕(in戦場)。こんなはずでは。
「悪名はかわいい」に誘われてきただけに、ダメージでかし。おもしろかったけどサァ‥。釈然としないまま家に帰り、もう一度「のんちゃんジャーナル(2)」をめくると、‥。
あれ?のんちゃんがすすめているのは、『悪名』と、『悪名市場』‥?ええーっ!?2作目で田宮二郎が死んじゃったのに、シリーズは続くの?‥なになに、『悪名市場』以降での田宮二郎の役は、『悪名』で演じた貞の弟・清二という設定‥?(ただでさえ弟分だった貞の弟。すごい!見たい!!)
ハハーン、そうか、きっと、悪名ファンの観客が怒ったんだ。貞を殺すな!俺たちはもっとうんとヴァイタリティの物語が観たいんだ、って。それでこんなふうなことに‥シビリアンコントロールか‥イイぞ〜。なんて愛すべきシリーズ化。悪名市場シリーズをいつか見るのがたのしみ。