ロシア革命アニメーション 1924-1979 @アップリンクX

【Bプログラム】〜ロシア・アヴァンギャルドからプロパガンダへ〜

チェブラーシカ』や、宮崎駿に大きな影響を与えた『雪の女王』、またはノルシュテインの切り絵アニメをロシア・アニメーションの表の顔だとするならば、こちらは我々にはこれまで窺い知れなかったダークサイド。1917年に始まった共産主義革命の過程で、資本家やファシズムそしてアメリカを徹底的に否定し、革命の成果を誇示するために、早くからアニメーションのイメージ伝達の即効性に着目していたソヴィエト政府は、人民を洗脳する手段として、共産主義プロパガンダを目的としたアニメという特異なジャンルを80年代末の体制崩壊まで一貫して発展させていった。
今見ると逆にカテゴライズ不能、ポップで刺激的なこれら短編アニメーションの数々―ジガ・ヴェルトフによるロシア・アヴァンギャルドの影響色濃いソ連最初期のアニメや、ロシア未来派の雄マヤコフスキーに捧げられたコラージュ・ワーク、そして米ソ冷戦真只中に、資本主義批判の建前のもとに敵国アメリカ以上のポップカルチャー趣味を炸裂させてしまった謎のアジテーション・アニメまで―いずれ劣らずクールでキッチュな全16作品を一挙公開。(→HP

ロシア・アヴァギャルドはさておき、プロパガンダ言われても。
わたしのように疑い深い人間は、アニメで大人を啓蒙しようという、その心が理解できないのです。だいの大人を、アニメで啓蒙しようだなんて。でもなんだか面白いものに出会えそうな予感がするの。アップリンクXは、かなりの盛況。アニメって人気あるのね。ついでに言えば、わたし、アニメにも明るくないです(いくつかのすごく好きなアニメ作品があるけれど、そのかげに「かわいいだけでまったく心に響いてこない」と肩落とす作品もたくさん)。ま、大人だし。わたし。
Bプログラムは全8作品、81分。笑っちゃうほどロシア・アヴァンギャルドな「惑星間革命」(1924)(ロシア・アヴァンギャルドとしか云いようがない←それがおもしろいかとか云えない)。造形がかあいくて色使いが洒脱な「ツィスター氏」(1963)には、ノルシュテインも(不本意ながら)参加しているとか(成る程)。これらは「観てよかったー」的満足感があるものの、政治色の強い作品は、どうにもピンと来ない。対象とかテーマがはっきりしすぎて、「これを観てどう思えと?」と居心地が悪い。やっぱりプロパガンダはだめねと心を決めかけたころ、ラストの、「前進せよ、今がその時だ」(1977)が圧巻だった。色が、音楽が!高揚!高揚!また高揚!!あまりのかっこよさに、「するよ前進!今がその時だもん!」。あっさり洗脳されるわたくし(大人)。プロパガンダおそるべし。帰り道、プロパガンダの有効性について考えたのだけど、難しくてよくわからなかった。「前進せよ」なんていうざっくりしたテーマだから受け入れやすかったのかしら。音楽が、色使いがかっこよかったから?かっこよかったというか、サイケでわたし好みだったから?サイケというか、もはやGSチックだったから‥?パンフを読んでいたら*1、監督のウラジミール・タラソフが、「この映画を作っている最中は自分たちも高揚していた。結果としてロシアはなにも変わらなかったのだから、自分たちは敗れた」的なことを語っていて、あの啓蒙は本気だったから有効だったのだなあと納得できた*2。今日観ることが出来なかった【Aプログラム】にも、ウラジミール・タラソフ監督作品があるみたいなので、そちらも観に行かなくては。たのしみ。

*1:ええ。「前進せよ〜」があまりによかったのでパンフ買いました

*2:単なるGS好きの血が騒いだという結論にならずにすんでヨカッタ‥