ロシア革命アニメーション 1924-1979 @アップリンクX

【Aプログラム】〜ロシア・アヴァンギャルドからプロパガンダへ〜
お目当ては、Bプログラム(→☆)でわたしを魅了したウラジミール・タラソフの「射撃場(1979)」。ほかの作品はあまり期待してなかったのだけど、その期待値の低さが吉とでたのか、おおむねたのしめました。(Bプログラム同様8作品あったのだけれど特におもしろかったもののみ記述)

::


「狼に気をつけろ(1970)」。まがまがしく凶暴で、目が離せない。水墨画のようなまっくろさ。暗い深い影。監督のエフィム・ガムブルグという方には、ぜひ「魔太郎がくる!!」を製作していただきたい。鑑賞後のなんともいえない重ーい気持ち。物語のなかで悪とされる狼少年がまぎれもない被害者で、誰をどう信じていいのかわからなくなる気持ち‥。この映画の上映は、演説かなにかと抱き合わせだったのではないかしら。詳細気になるなあ。誰を信じていいのかわからない気持ちになったときって、ひとはどうするんだろう。わたしは猫をなでに行くけど。ああ揺すぶられた。


「電化を進めよ(1972)」。朗らかにたからかに、笑いながら歌いながら走ってくる電柱。ってオカシイでしょ。うろたえるでしょ。この無邪気さには圧倒されるわ。「共産主義とはソヴィエトの権力プラス全土の電化である」。レーニンはほんとうにこんなこと言ったんスか。そースか。頭をさげるしかないなあ。音楽がのんきで拍子抜けするけれど、この無邪気さがいいのかなあ。でもでもこの何十年か後に、ソヴィエトで電気の大事故が起こるのだから‥。やっぱり無邪気は危険だなあ。


ラストは楽しみにしていた「射撃場(1979)」。期待を裏切らないかっこよさ。A・Bプログラム共にタラソフ作品を最後に持ってくるのは、やっぱりこの特集のウリがタラソフなんだろうなあ。さあ次はストレートに、ウラジミール・タラソフの特集上映をお願いしまっす!
今回の音楽はフリージャズ(?)。どえらくかっこいい。色の洪水みたいだった「前進せよ!」と比べてモノクロテイストが強そうなのが若干不安だったのだけど、そのモノクロ場面が白黒のコントラストがくっきり鮮やかでたいそうスタイリッシュ。カラーより色味があるかも知れない。スマートでたいそうかっこいい。ただ、刺激的にかっこよくするあまり、プロパガンダはどこかへ行ってしまった(ふつうに娯楽映画になってしまった)。こういうところが、憎めなくて好き。

::

さて、プロパガンダアニメ。プロパガンダの枠のなかでおもしろいもの、枠をこえておもしろいもの、あるいはその反対。いろいろなものがある。あたりまえだけど。おもしろいものはどこにあってもおもしろいというのは、ある意味とっても心強い。
ちなみにプロパガンダアニメはどこの国にもあるもので。たとえばアメリカでは、ミッキーやドナルドダック、ポパイが活躍したらしい(とパンフに書いてあった。ベティちゃんもそれっぽいことしてたような気がするし、キャラクターを使うのは、ポップで賢い戦略だなあ。とても有効というか)。日本ではのらくろあたりが一枚噛んでそう。良い・悪いではなくて、そういうものなのだと思う。というか気付かずに巻き込まれているほうがこわいと思う。呑気に笑っている場合ではない(この猜疑心は「狼に気をつけろ」を観たためか。けっきょく洗脳されておる)。