旅芸人の記録(1975) @早稲田松竹

この映画を観るのは二回目。前回はなんの予備知識ももたずにスクリーンに向かい撃沈したので*1 *2、2009年の映画はじめはリベンジマッチ。今回はおおまかな展開と印象(心構え)が頭に入っているので、戸惑うことはない。とはいえこんな衝撃的展開を忘れるわけがないから、前回はうとうと寝ていたんだなあ‥とうなだれる場面がいくつか。一座の旅の概要を、ようやくつかんだ。

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傍観者のようで当事者な旅芸人の一座。残酷なギリシア神話*3。政治と思想と圧制、デモと流血。男と女。闇にまぎれての移動。ヒナギクの答は悲しかったわ、わたしは泣きながらほほえんだ。曇り空のした、灰色の街並。土地を時間を漂うように歩く、旅をする。二日間、眠っていなかった。
この映画は紛れもなく美しいのだけれど、これを美しく思う心ってなんなのだろう。つらい旅なのに重い映画なのに、そして4時間なのに。いつかまた観たい、もっとわかりたいと思っているのはどうしてだろう。映画が終わり場内に電気がつき、まっしろになったスクリーンを、もうなにも映さなくなったスクリーンを、不思議な気持ちでじっと見た。

*1:たいていの現代日本人の予備知識では、この映画で下敷きになっている歴史・政治・ギリシア神話、どれにもついていけないと思う。さらに、遠景が多く説明描写がないので、はじめのうちは登場人物の見分けがつかないし関係性もわかりにくい。しかしよくわからないままに密告したり処刑されたり全裸になったり‥展開は派手で、ついていけない。でも!なんだか胸にずしっときたのです。くるのです。観終ってほうけてしまうのです。そんな思い出

*2:とはいえ、細部にこだわらず神の視点みたいなもので観ることも可能と思う

*3:ギリシア神話って、彫りが深くシリアス顔のこの民族ならではのものだ。同じ意味でこの映画はギリシアならではなのだろうなあ。ギリシア