日本映画の旗手たち(12)井口昇 @新文芸坐
このあいだの『ゾンビアス』の上映時に、このオールナイトの告知がありました。「文芸坐で自分の特集が組まれるのって井口さんの夢だったよね‥!」と語るデモ田中。デモ田中が井口昇について語るとき、いつも異様に感動してしまうのはわたしだけでしょうか。「文芸坐のオールナイトに何度か連れて行ってもらったよね(デ)」。男同志で映画に行くとき、「連れて行ってもらった」って言う?(ここ感動ポイント) 「夢って‥(照れて)。でも俺映画少年だったから、文芸坐にはほんと通っていたんですよ。いつかはあのスクリーンに自分の映画をかけたいって思っていたから‥ほんとにうれしいです(井)」。「なんだっけ、“日本映画の旗手”だっけ‥。旗手?かっこいいなぁ‥(デ)」。「(照れて)‥いや、それ、いいから‥(井)」。
わたしも、新文芸坐の客席にいる井口監督を目撃したことがあります。だから、今日のオールナイトは記念碑的なイベントね。(長く暑苦しい感想なのでたたみます)
もうひとつ記念碑的な出来事。トークショーに、マシンガール主演の八代みなせさん登壇。
自分でも不思議なんだけど、わたしはマシンガール上映中に、3回劇場に足を運びました。鮮血映画に3回。血がこわいわたしがどうして3回も劇場で観たかというと、主演のマシンガール役の八代さんが、そりゃもうよかったのです。華奢で可憐ながら、目にいきおいがあって、体当たり演技に目が離せないのです。ヒロインが魅力的なことで有名な井口映画のなかでも指折りのチャームだと思います。3回のうち2回はイベント上映だったのですが、壇上で、「なんで主演の人がいないの?」「知らないですよ」「1回も来ないもんねえ」という会話があったのを記憶しています。マシンガールは来ないんだ。さびしくなったのを憶えています。マシンガールの一般公開からおよそ5年を経て、初のマシンガール登壇。
井口監督と八代さんがお会いすること自体5年振りだとか。「うわ、八代さん‥。変わりませんねぇ‥(井)」「監督もお変わりなく(八)」「えぇっ、そう?僕、あのときから5キロは太ったんだけど(井)」。なごやかにガールズトークっぽくはじまり。
(懐かしかったので記念に貼ります)
「あ、あれはどうして‥」。どうして5年前にマシンガールに対して否定的なスタンスにたったのか、まずはこれを聞いておきたい井口監督。「すみませんでした!」いきなり頭をさげる八代さん。「え、え、なに、どういうことだったの?」。八代さんの話を要約すると、マシンガールは、はじめて本格的に演技をした作品で、すごいがむしゃらに日向アミを演じた思い出があるものの、当時いろいろ相談させてもらっている信頼している人に、「なんでこんな作品に出るの?」と否定されてしまい、どうしていいのかわからなくなってしまったそう。「えー‥。そうなの?マシンガールは海外でも評価されてるんだよ‥?(井)」。「そうですよ、映画を観た江口寿史さんもすごく気に入ってくれて、八代さん、いい!!って破格(に安い)の値段でポスターとかTシャツを描いてくれたんですから(田野辺)」。マシンガールを否定され、憤る会場。「自分のなかでも、演技がへたとか、色々あったので(心を閉ざしてしまって)‥。でも、このあとお仕事に声をかけてくださる方は、みんな、マシンガールがよかったって声をかけてくださるんです。それで、もう、最近は、マシンガールはわたしの宝だって思えるようになりました(八代)」。「じゃあ、作品がイヤなわけではなくて‥?(井口)」「作品は好きです!わたし、自分でマシンガール買ったんです。あの箱の‥(八)」(←DVDのこと?当時の決裂が本格的すぎてこわい気が。汗)。 「撮影中も楽しかったし‥(八)」。「そうだよね、撮影中、楽しそうだったよね。楽しんでくれてたよね?(井)」。「楽しかったです!視界が赤一色になる、あんな経験ほかではできないですもの(八)」。「よかった‥!(井)」。会場に広がるほのぼのした安堵感。みんなマシンガールが好きだから、安心したのです。トークショーのあと八代さんは新文芸坐の椅子に座って、観客といっしょにマシンガールの上映に挑みます。冒頭の「主演 八代みなせ」のクレジットに拍手がわいたのは言うまでもありません。
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高校生の女の子が復讐のため人を殺しまくるというのは、映倫が黙っていないんじゃないかとか、一般公開できるのかどうか、かなり危ぶまれたんだとか。 振り返ると、マシンガールと東京残酷警察の成功が、なにかのターニングポイントになったことは間違いないんだそうです。知らんまに歴史に参加していたか、そうか。何回も観て、鮮血に拍手する気構えは出来たものの、ヒロインがここまで強くならなきゃいけない世界には、やっぱり悲しい気分にもなるので、いつか、ここをこえた鮮血映画ができるといいなと思います(いいのか?)。
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そんなわけで、この映画の一部分がとっても乙女映画でせつないのだけれど、原作に忠実に富江トレインを走らせちゃったりしてるので、届きにくいかもしれません。惜しいことを。
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あっザボーガーの上映前に、若き日の大門豊を演じた古原青年が飛び入りでトークにやってきたことを書かなくては。なんて豪華な飛び入り!監督ったら愛されてるわね。古原青年は、ザボーガーに出演する前から「マシンガール」の存在を知っていたそうです。ドン・キホーテのおすすめDVDコーナーで見て、R18だったので、AVかと思っていたとか‥(セクシーなR18ではなく、残酷描写のR18なんですよね‥)。
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タイトルと、公開当時に見たチラシやポスターのヴィジュアルをずっと覚えていて、なんであのとき劇場に行かなかったんだろう‥とうっすら自分を責め続けていた「恋する幼虫」。ずっと観たいと思っていたので、今回のオールナイトの目玉はどう考えても「恋する幼虫」!(「ザボーガー」や「富江」はこのあいだまで上映していた印象もあり)などと意気込んで望んだのですが、‥こんな映画だったとはー‥。
公開当時、井口映画になんの免疫もないまま観ていたら、トラウマになったこと必至。だってだって、誰があんな展開を予想する!?当時のわたしはあの不器用な愛を受け入れられなかったこと必至。いや、今だってそんな‥手放しで受け入れられているわけではないけど。その人がその人であることをそれでこそ、と思えるようになった歳の功というか。だって、ほんとに、ほかの誰があの展開に‥するよ!?人間の本質って変わらないんだなあ。清々しいやら、胸が詰まるやら。はじめはひたすら地味で、若干不快ですらあったヒロインが、物語の加速とともにぐんぐん魅力的になるのも井口節(昔からそうだったのね‥)。
22時に始まったオールナイト上映も、4本プラストークショーをはさみ、終わったのは6時過ぎ。ええと、昨日でいうと30時か。ふらふらの頭に渇をいれ、帰り支度をすると、ロビーでは井口監督が帰る観客のお見送りをしているではありませんか。なんて盛りだくさんの‥愛にあふれたオールナイトなんだろう。参加できてよかったなぁ。これからも参加し続けたいです。
(付記。このオールナイトの男女比は、7:3と6:4のあいだと見た。女子率健闘してます!てか、ヤマガミくん、ヤマガミくん♪)