ラジオの思い出

小学生の頃いっとき、谷山浩子のラジオ番組を聴いていた。土曜の夜、30分のAM番組。テーマソングは、「ねこの森には帰れない」という歌だった。

きのう手紙がとどきました ふるさとのねこの森から
お元気ですか もう10年も 帰らないので心配してます
  あたしの好きな 赤いきのこ なつかしい 朝のそよ風
  思い出したら 泣きたくなった だけど 今では 仕方ないこと
ねこの森には 帰れない ここでいいひと見つけたから
ねこの森には 帰れない なくした夢は もどらない

なんとなく覚えているのが、ある日きた、こういうハガキ。→「テーマソングの歌は、かわいらしいかんじだけれど、“なくした夢はもどらない”だなんてさびしすぎます。なのでわたしは○○さんの△△△という曲をリクエストします。この曲は、“夢はいつだって君の近くにいるよ。あきらめちゃだめだよ”という元気のでる曲です」。ぽそぽそとそれを読み、「では○○さんで△△△かけまーす」とリクエストにこたえた谷山浩子は、曲をかけた後、「うーん。わたし思うに、リクエストくれた××さんは、○○さんのことが、△△△という曲が、好きなのですね」そうぽそっと言って、次の話題に入った。小学生だったわたしは、「!? そりゃそーじゃん? エ? この話これで終わり??」と、なんとも釈然としないきもちになったのですが。
大人にもなり、「ねこの森へは帰れない」の、「なくした夢はもどらない」と言い切ることのやさしさを実感すると、あのときの谷山浩子の話のシメは、ものすんごく妥当だなあ、と。たまになんとなく、あたまのなかで反芻させます。