大阪ハムレット(2008)/おくりびと(2008)@ギンレイホール

大阪ハムレット

それぞれに悩みを抱える三兄弟と肝っ玉母さん、そして、なぜか亡き父の弟が同居する久保家。(略) ありのままを受け入れ前向きに生きる一家の、おおらかな人生讃歌!! / 出演: 松坂慶子岸部一徳森田直幸久野雅弘

こんな地味なキャストの映画、誰が見るんだ‥とかろんじいたのだけれど。意外やターゲットはわたし(ほんのりとした岸部一徳ファン)であった。なんてこったい。予想に反して面白かった。何箇所も泣いて泣いて*1、目がシパシパになってしまった。泣かせながらもしめっぽくないよ(あたたかいよ)と日記には書いておく。
とにかく岸部一徳が。徐々に生活に浸透してくる一徳。ホラーかつ、すこし胸キュン。そうだよ、こういうほのぼのホラーを作ればいいのに‥*2。ハッ、徐々に一徳が生活に浸透してくるほのぼのホラー、それがこの映画か‥?気がつけばおそろいのTシャツにそでをとおしてしまうあたり、あなおそろしや、家族というもの。

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おくりびと [DVD]

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以前この映画の予告を観たとき。ヒロスエの「さわらないで!汚らわしい(けがらわしい)!」という台詞にヒャーッと思った*3。やっちまったな。たぶんこの映画ハズレ。そんな気がして観ないでいたけど。ギンレイに来るなら見てもいいかあ。アカデミーとやらを拝ませてもらいまひょ。そんなかんじで挑み、見事に撃沈。無神経な映画だと思いました。アカデミー賞相手に生意気言ってすみません。
身内の葬儀を終えたばかりというのもあるのか、リアリティのなさにびっくりした。そもそもシンプルに、納棺師そんなに儲からないと思う(山崎努、かっこいいけど金をばらまきすぎ。最後のエピソードも、モックン30万の棺もらったんだ‥と呆然とした)。物語のスタート地点・1800万円の借金も、ふたりが暮らす部屋も、事務所の2Fの部屋の内装も、描写がバブリーで、なつかしくも 下品 うすっぺらなにおいがした。そこへ「けがらわしい」という言葉。もはや手をたたいて笑いたい痛快なダメ押し。「けがらわしい」と言い放つ幼稚な妻に腹を立てないのも許せるのも不思議。というか解せない。わたしなら許せないけど。バカだけどかわいいから許される☆(ヒロスエの演技は終始そんなかんじだったけど、役作りだよね?役作りであってくれ)的なその世界構造が無神経だし差別的。女として居心地わるいわー(考えてるうちにだんだん不機嫌になってきた)*4。「おくりびと」の感想をななめ読むなかに「自分の体験した葬儀を思い出して泣けた」みたいのがけっこうあったけど。きちんと実際の葬儀のときに泣いておくべきと思う。
後ろの席の女の人が、過剰反応(もしやヒステリー?)と思うほど泣いて笑って反応(ほんとモックンと山崎努の一挙一動に笑うんよ。モックンが山をバックにチェロ弾くところで、「ねぇねぇ、これほんとにモックンが弾いてるの?」と友達に聞くんよ‥)してたのがイライラしたのか批判的な感想となりましたが、好きなシーンもありました。棺のなかにいるお父さんの顔に女性陣がみんなして赤い口紅のあとをつけるところ(桃の節句の支度がしてあるのもいいなと思った)、おばあちゃんにルーズソックスをはかせるところ、嫁(ヒロスエ)にでていかれたモックンが、フランスパンに刺身をのせて食べるとこ。(あと、結果としてわたしに「大阪ハムレット」を観る機会をくれたことに感謝)

*1:特に三男くんとおばさんのエピソード。ああいう大人にわたしはなりたい

*2:スローガン。岸部一徳で「李さん一家」を!

*3:偏見を、持つ人は持つのだろうな、とは思うのだけど‥。いかにもうすっぺらそうな世界が透けて見えた気がした

*4:小説「GO」でも、ヒロインの偏見発言に対して主人公の気持ちが冷めないのが不思議だった。わたしなら百年の恋も冷めるがな。恋人になにを求めるかというのは、世界になにを求めるかぐらいの大事なことだと思うので。大事なところがわたしとちがうんだな、と思うしかない