茂田井武「ton・paris」展 @大川美術館
【特別企画展NO.84 茂田井武「ton・paris」展】
- 作者: 茂田井武,広松由希子
- 出版社/メーカー: 講談社
- 発売日: 2010/07/08
- メディア: 単行本
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「物語る絵」といわれ、戦後児童雑誌などの装丁や挿絵の仕事を通して夢を描き続けた茂田井武(もたい・たけし 1908-1956)。童画家として戦後ユニークな活動を続け、今日でも多くのファンに親しまれている茂田井武は、1930年シベリア鉄道で渡欧し、約3年間放浪を続けました。パリでは美術学校に通うこともなく、さらにルーヴル美術館に通い詰めるでもなく、日本人クラブの食堂部で働きながら、夜、安アパートで一人になったとき、絵日記のように描き綴った画帳『ton・paris』。茂田井が暮して日々感じ取ったパリの情景とその空気が一枚一枚に描かれた、そのぬくもりのある筆致と茂田井の遊び心に富んだ作品群は今もなお多くの人々に愛され続けています。1930年代のパリの生活の匂いを伝える「ton・paris」全93点を一挙公開し、同年代に描かれた当館所蔵の茂田井作品も共に紹介する機会とします。(→大川美術館HP)
迷路のような大川美術館の奥、ぽんと開けた白い部屋に飾られるパリの記憶。ひとつひとつの絵は小さいけれど、これだけずらりと並ぶと壮観。淡い色調ににじむ旅情。異邦人のナイーブさ青年の楽観。絵のひとつひとつからとおいパリのおはなしが聞こえる気がして、耳を澄ませばいろんな話や音がいつまでも聞こえる気がして。ずいぶん長居をしてしまった。長居をしてもいつまでもなかなか部屋から出る気持ちになれず、仕方がないのでトカゲの尻尾みたいに少し心をあの部屋に置いて帰った。
古本屋さんで「トン・パリ―茂田井武画集」を手にして以来いつかは行かねばなるまいと思っていた大川美術館。「ton paris」全93点すべてを展示するという夢のようなこの機会に行かないわけにはいきますまい。しかし桐生は遠かった。わたしの住んでる駅から電車に揺られて3時間、乗り換え4回*1。不安だったけれどやってみたら心地よい緊張感に背筋がのび、達成感もあり、なかなか楽しかった。窓に広がる夏の空、見たことのない景色。線路は続くよどこまでも。自分の行動範囲が広がるのって嬉しい*2。(大川美術館、小さい部屋が続く迷路のような造りがわくわくを高めるのと、ほとんどの部屋にソファが置かれる心配りがとてもよかった。ほかの部屋の展示がさりげなく豪華で見応えあった。長谷川潔のアネモネが見られるとは思っていなかったので嬉しかった)(同時開催の常設展のテーマ展示が「巴里と日本人」というのもすてきな心配り。見応えあった)
心残りなのは折角の桐生訪問だというのに(桐生は「クラクラ日記 (ちくま文庫)」を読んで以来憧れの地。映画「人のセックスを笑うな」の町並みも素敵だったし、ロマンチックなイメージ強し)美術館のほかはなにもまわらなかったこと(体力気力使い果たした)。モダン洋館よ織物よアイスまんじゅうよ。近いうちに訪れるその日までいい子にして待っていておくれ。