日本橋(1956)・鍵(1959)@新文芸坐 〜追悼 市川崑〜

日本橋 [DVD]

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よかった‥!眼福というか幸福。いいものを見せてくれてありがとう。感謝の念すらわいてくる。
いくつか画面の美しさに鳥肌の立つ場面があって。それが物語からはみだすのではなく*1、奥行きをみせてくれることにためいきをつきました。美しくってかなしい、夢のような女たち。
豪華女優陣のなかでも特に、若尾文子をたのしみにしていたのだけれど。まだ新人時代(たぶん)の若尾文子は、可憐かつ健気な、むしろ儚い役どころを要求されているのに、なんだかどうにもふてぶてたくましそう。「青空娘」のときにも「健気な役なのに貫禄ありすぎ‥」と思ったが。‥若尾さんのそんなところが好き。でも淡島千景の役がそりゃあロマンチックに愚かで胸を苦しくしてくれた(山本富士子も切ないんだけどねー‥)。恋で気がふれてしまうなんて、もうもう夢すぎる*2。着物姿も3人3様麗しい(粋でサービス精神あふれる淡島千景、可憐な若尾文子(常に振袖)、上品ながらも衣紋をぐぐーっとあける山本富士子)。見て楽しいのは淡島千景、まねしたいのは山本富士子だなー。うっとり。
(オープニングでキャスト名がでるときに、けっこう大きく「川口浩」の名前が出たので、ワーイ川口浩がでてるんだーと楽しみにしてたのだけれど。すごい出番少なかった(しかもあれ‥)。あの出演時間であんなに大きくクレジットされるということは、当時の人気がすごかったのか(それであれ‥)。ちょっと衝撃)(さりげなく仮装して(?)脇役で船越英二がでてるのがなんだか落ち着かないー(「破戒」のときももぞもぞした)。あなた主役クラスじゃなくて?みたいな。いや、仮装が落ち着かないのか)

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鍵 [DVD]

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当時のプレスシートに、「見たことのない京マチ子がここに」的文章が書いてあったけれど。たしかに、こんな眉毛の京マチ子、はじめて見た。眉毛、ヘンだよ。眉毛自体は、既存概念にとらわれないというか、想定外行動をとる人物ぽくていいのだけれど(ふつうに妖艶)、地眉がたまに見える(途中から眉毛が2本に分かれる、みたいな)のは、明らかに、ヘン‥。当時はアリだったんすか。この眉毛が映画ラストの破綻をあらわしているのだと思う。おもしろかったけど。でも眉毛ヘン。
(見たことのない叶順子、とも書いてあって。叶順子も眉がヘン。ちょっと不細工な娘さん役のため、ボサボサ眉にされとる。でも実際それだけでどんくさい顔になるから眉毛ってすごいな!叶順子、雨でずぶ濡れになるシーンは、眉メイクが落ちたのかシャープな美人顔だった)
そういうわけで、影の主役は眉毛だった。

*1:市川崑てときどき物語からはみだしてモダンに走っちゃうことがあると思う‥

*2:いきなり「鯉で気がふれる」と変換させてしまうわたしのような人間には特に