精神(2008) @イメージフォーラム


こころの傷に特効薬、ありますか?
カメラがじっと目を凝らす。固く閉ざされていた精神科の扉が開く−。『選挙』の想田監督が再びタブーに挑んだ観察映画第2弾。(→HP

観察映画は観察する。世界を、わたしを。なんだかやけに感情的なのでたたむ。
正直な疑問。精神が100%健康な人っているんだろうか。みんな少しづつ、あるいはたくさん、病んだ部分を持っているんじゃないの。わたしは自分の精神がやられないように、あらかじめ少し捨てている部分を自覚してるけど。みんなは違うのかな。精神の健常者(と自分のことを思っている人。たぶんあなた。そしてわたし)がそうでない人を差別したがるのは、「自分はそうじゃない・自分は大丈夫」って思いたい、こわいからじゃないのかな。偏見が無知からくる恐怖から生まれるというのはよく言われることだけど、精神病は、知ってもこわいもの。自分が狂ってしまうのはこわいもの。わたしはこの件については偏見を否定できない*1
この映画にでてくる患者さんたちの顔にはモザイクがかかっていない。表情を見るということは、感情を見るということで、顔って実にエモーショナルなものなのね。たしかにこれにモザイクをかけたら台無しだろうけど、だからといって顔のアップをあんなに長時間‥。信頼関係のなせるわざだなあ(業っていう字もわざって読むのね)。しかし顔だし、本人もだけれど、家族の方はよく了承したな。その勇気に決意に、想田監督のハードなやさしさに敬意を。顔だしについていろいろ考えていたら、最後の追悼に水を浴びせられたような気分になった。顔出し、しておいて正解、だと思う。生きている姿を残してくれてよかった。悩むのもとらわれるのも、カメラをまわすのもまわされるのも。命あるうちのことだもの。どうせなら残しておいたほうがいいもの。そう思うわたしは、たぶんおめでたいのだけど。
この世にはかなしいこと・おそろしいことがたくさんあるけれど。いいひとはいいな。そう思える人が何人かでてきたのでいい映画。嘘をつくことなく世界を美しく観察して切り取る力。時おりはさまれる風景ショットに詩情があるのもよかった。ちいさいことにこうやって、救われていきたい。

*1:否定できないついでに言うけれど、患者さんへの偏見をなくす意味でもモザイクはかけたくなかった、というのはすごくよく理解できるのだけど、でも。ぶっちゃけ偏見の強い人は、お金を払ってこの映画を見たりしないと思う