迷宮への招待 エッシャー展 @横浜そごう美術館

 
M.C. エッシャー(Maurits Cornelis Escher, 1898-1972)は、オランダ北部フリースラント州の町レーワールデンに、土木技師ジョージ・アーノルド・エッシャーの5男として生まれました。21歳でハールレムの建築装飾美術学校に進学し、当初建築を学ぶも版画科へ転じます。そこで生涯の恩師となるド・メスキータ(Samuel Jessurun de Mesquita, 1868-1944)と出会い、版画技法を学びました。1922年に卒業するまでの間にイタリアやスペインなど南欧を旅し、各地の風景を多く版画にし、特に、1922年9月に訪れたグラナダではアルハンブラ宮殿幾何学模様に衝撃を受けます。この時の感動は彼の芸術に大きな影響を与えました。
1923年以来エッシャーは、ラヴェッロやローマなどイタリア各地に住んでいました。しかし、戦争の影響で1935年にスイスへ移住。愛するイタリアから引き離されてからは、風景や静物といった具象的で身近なものから、幾何学的なものや心象風景的なものへと作風が変化していきます。1958年にはユトレヒトの共同墓地壁画、1967年にはハーグ中央郵便局壁画など多くの公的な作品を手掛け、国の内外からの人気を不動のものとしました。
本展は、ハウステンボス美術館のコレクションの中から、イタリア風景版画や『24の寓意画』シリーズのほか、《昼と夜》に代表されるような視覚トリックを駆使した不思議な世界を表現した作品を展覧いたします。さらに、オリジナルの版木やエッシャー家ゆかりの資料類、そして同時代作家作品もあわせ、120点あまりの作品で皆さまを迷宮へと誘います。(→HP

若き日(騙し絵以前)の版画シリーズ『24の寓意画』がゴチックで素敵だった。この、「黒い面と白い面」の発想が、モチーフつなぎ的な図案(鳥の群れが魚の群れに置き換わるようなやつ)に発展していくのだろうなあ。モチーフつなぎは見ていて楽しい。空と海とがくるんと反転。騙し絵というか魔術。東洋人のわたしには、曼荼羅にはならない、あくまでグラフィックアートなのが興味深い。後半の建築の絵の魔術には、ついていけなかった。もともと、絵なんて出鱈目上等!って思っているので、水が下から上に流れても、べつに‥。この絵の素晴らしさを語り合うカップルを横目に、騙されるにも知性が必要なんだな‥と寂しくなった。実際エッシャーの絵をさいしょに評価したのは数学者たちだそうで。‥クスン。エッシャー本人は、数学は苦手で(中学生のときに見切りをつけたって。親近感)、騙し絵というより、インスピレーションとイマジネーションで作った世界ぽいのだけれど。「夜の階段で見たものを絵におこしたい」って言葉が素敵で。数学者であり詩人なのねと思いました。