楳恐 @HEP HALL&CHELSEA MARKET

それは七月の、蒸し暑い夜のことだった。楳図かずおのオフィシャルHPを見てうなる者あり。

・・・ うーん、この大阪で開催される「楳恐」(楳図かずおこわい漫画展)、東京には来ないのかしら。大阪でしか開催しないのだったら大阪へ行きたいのだけれど*1、‥まあ行きたいだけで、実際には、行かないのだけれど。おっ楳恐にあわせて大阪でライブもやるのか。トークショーゲストはみうらじゅん楳図かずおみうらじゅんの組み合わせなんておもしろそう!あー・だけど大阪は遠いよなあ‥・・・。 あきらめさせてほしくてKに話を振った。

ねえ、いくらおもしろそうだからって、楳図かずおを観にひとりで大阪に行くのは(人として)(女として)駄目だよねえ?ほら、ゲストがみうらじゅん。ちょうおもしろそう。でも、あきらめなきゃだめだよね、大人なんだから。 「なんで?大阪、行けばいいじゃん」。 え?大阪、遠くない? 「そんなでもないよ。一昨年行って、多少土地勘もあるでしょう?大阪は都会だから、そんなひどい迷子にはならないよ」。 え、そうかも、そうだけど、‥‥(そんな奥さんで)いいの? 「いいよ。行っておいでよ。俺には夏休みがないから、悪いなあっていつも思ってるんだよ」。 え、だけど‥。 「行っておいでよ(慈笑)。たのしんでおいで」。

そんなこんなで背中を押され、後には引けず(‥いじめ?)。行ってきました大阪に。

【楳恐】@HEP HALL
    
漫画の枠を超えて、芸術・エンターテインメント全般に渡って稀有な独創性を発揮し続ける、宇宙一ロックンロールな天才芸術家、楳図かずおセンセイのデビュー55周年を祝え!「漂流教室」や「おろち」をはじめとする数々の作品の世界を体感できる、唯一無二の超非日常な楳図ホラーエンターテインメント展!(→☆

恐怖心をそそる展示法(黒い小さな密室に恐怖シーンがあったり、天井裏?に懐中電灯をむけてタマミを見たり)がたのしかった。漫画ごとに部屋が分かれているのだけど、やはり「漂流教室」「わたしは真悟」は一部分を見ているだけでテンションあがるし泣きそうになる。複製原画しかなかったのが残念だったけれど、入場料500円でステッカーが付いてきてそれで原画が見たいっていうのは贅沢だろうな‥。と思ったら、楳図先生は過去の展覧会時に原画を盗まれたことがあるらしく、原画展示は基本NGなんだそう。がーん。今はもう防犯対策も進化したと思うし、おそれることなく原画を展示‥つうか今こそ大々的に楳図かずお展をするべきなのに。
ちなみにこの展覧会を見た日、ひとり大阪のホテルに泊まったわたしは。展覧会、そんなにこわくなかったな、と思いつつ、おそろしい夢を見てうなされました。夜中目が覚めて、「‥お盆中だからいろいろ帰ってきてるのかしら‥」とか考えたらもうダメ。楳恐でのギャアアって顔が目に浮かび、数日前に見たゲゲゲ展の妖怪なども思い出し、‥恐怖がうすれました。これからは、こわい気持ちになったときには、「河童の三平」を思い出そう。そうしよう。

【楳恐ライブ】@CHELSEA MARKET
  
 【出演】キャッ!!プス(KAZZ(楳図かずお)、Qロベエ、ないない) 金子デメリン、suzumiki(opening act)、みうらじゅん(special guest)     

赤白ボーダーの楳図かずおのよこに黒白ボーダーのみうらじゅん。このツーショットは貴重な気がする〜。わざわざ大阪まで来てしまったわけだけど、実際おふたりがサシでお話をするのはハジメテのことだそう(テレビ番組でご一緒したことはあるけど、ほかにたくさん人がいたし席も離れていたんだとか)。しかしこの日は撮影禁止。わざわざ大阪まで来たのに、東京の楳図イベントはたいてい撮影OKなのに。いいかんじに異空間だったのに。ちえ。

この日のためにこのボーダーシャツ(黒×白)を東京で買いました、というみうらさんに、そこの梅田駅前に赤白ボーダー売ってるお店あったのにーとやんわり‥ダメだし?ダメだしなのか?の楳図先生。「そのボーダー、その間隔(狭め)だと、遠くからは灰色に見えちゃいますね」。やっぱりダメだしなんですね!?ボーダーのマストの幅は5センチ。3センチだと細すぎて、10センチだとただの面の切り替えになるんだそう。ボーダー愛の源について聞かれ、「聖書にも、あるんですよ。“ふたつのものを混ぜてはいけない”ってフレーズが」。「‥意味が‥。わからないんですけど‥」。「意味はねぇ、わっかんないんですけどね。ハハッ」。さすがのみうらさんも楳図かずおにはたじたじか。話が突然宇宙にとんだりしますしね。

「最近腹が立ったことは?」の問いには、「吉祥寺のご近所さんですよ」。東京ではあの騒動のことをあまり話さないような気がするので、これは大阪遠征効果?やはりあの騒動では深く傷ついていられるようで(そりゃそうだよそりゃそうだよそりゃそうだよ〜〜)(でも、お隣に楳図かずおが越して来るって、人によっては抵抗あるかもね。こわい漫画を描きすぎましたもん)(作者と作品を混合するひとはけっこういると思うし、そこをあまり非難は出来ない気がします。でもあの態度はない)(あの騒動は、景観シマシマ云々ではないそうです。土地を買った時点で反対されていたんだとか。裁判において和解というのは、自分の非を認めたことになります、勝つか負けるかしかないんです。徹底的に戦うように弁護士さんに言われ、実際そうして勝った結果、かなり住み心地が悪いみたいで‥)。「とんでもないところに家を建ててしまいました」。今でも、家の前で会ってもお互い挨拶すら交わさないんだとか。気遣いの鬼・サービス精神の塊の楳図先生がそんなことって。気の毒すぎる。さいきん夏休みで吉祥寺の飲食店がオヤスミのこともあり、電車に乗ってちょっと遠くにうなぎを食べに行ったらそのお店にご近所さんがいてキイイ‥!こんなとこで鰻食べてるんじゃないよ‥!(この「キイイ‥!」と怒りを訴えるようすが非常にチャーミングでかわいらしかったのですが!)と個人情報をだだもれにしながら熱く語る様子が、というか鰻が、みうらさんの心を強くつかんだようで。「鰻、召し上がるんですか?」。「鰻。もしドキュメンタリー映画の第二弾を作るとしたら、鰻を食べる楳図先生をぜひ記録しておいてほしいです」と監督に訴えていました。楳図先生は、「そんなわけで人間がいちばん恐いですね‥」と話をしめていましたが、先生が恐がられているのこそが事件の発端では‥。


その昔、「まことちゃん」を連載していた頃、楳図先生の事務所には近所の小学生がしょっちゅう遊びに来たそう(クーラーを入れず窓と玄関を開けていたので、外から丸見えで遊びに来ちゃうらしい)。仕事をしているので小学生の相手はできないので、近所の喫茶店からコーヒーを注文して振る舞ったのち、子供たちは子供たち同士で遊び、夕ご飯の時間になると帰っていくのだそう。子供たちがわいわい?それ、保育園じゃないですか、というみうらさんに、いや、彼らは小学生だから(保育園という年齢ではない)。と楳図先生。そういう問題ではない‥←わたしの心つっこみ。それにしても小学生相手にコーヒーって。小学生、夜眠れなくなっちゃいますよ。「ああそうかもね、ハハ。でも、そんな子供たちのなかに、おぎやはぎの顔の丸いほうがいたんですって。本人から聞いたんですけど」。楳図先生‥。おぎやはぎの顔の丸いほうってどっちですか。みんなそう思ったようで、「おぎやはぎの‥。背の小さいほう?」「ウン」「なんだ矢作か」というやりとりがあり(矢作‥)。(これは、本人から、「あのときはコーヒーご馳走様でした」みたいに言われて‥。紳士的に振舞っておいてよかったな、というお話でした)

どの会話のどんなフレーズだか忘れてしまったのですが楳図先生の発言に対し、「なんだ、今の。かわいいぞ?」。めんくらうみうらさんが印象的でした。
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帰りの時間があったので、ライブは最後まで観ることが出来なかったのですが*2、今までギターとボーカルだけのユニットだった「キャッ!!プス」にドラムが加わり、音が分厚くなったのに感心したり、なぜいっそベースも加えないのかしらといぶかしがったり。デメリンさんがへび少女の台詞部分を思い出せず、「やっぱり思い出せなかったー!」と言いながらステージを去っていき、さぞや悔しかろう‥台詞部分とりとめがなくて覚えにくそうだもんなあ、気の毒に。と思ったり*3

熱いステージはいつものとおりなのですが、初めてライブを観る大阪のファンはさぞや驚いたことでしょう。などと冷静を装いながら、去年作った新曲「まことちゃん音頭」が近々リリースされるというMCにびっくり仰天。まことちゃん音頭。誰が買うんだ需要あるんか、と思いながら、きっとわたしは買うであろうよ。間違いなくな‥。

*1:ウメダでウメコワ‥

*2:じゃあ日帰りでもよかったんじゃあ‥

*3:最後のほうでもう一回リベンジ「へび少女」したらしいけど、すでに電車に乗っていたので観られずざんねん