『UNDERWATER LOVE 〜おんなの河童〜』公開記念特集上映 いまおかしんじの世界+ @ポレポレ東中野 

(観たのはべつの日だけど、おもしろかったので感想書きます。書かないと忘れちゃうから)
いまおかしんじ特集上映があると知ったときは、天にものぼる気持ちだったのに。18時からって、なにそれ(怒)。誰に見てほしいんだ。 せめてモーニングショーなら休日に行けるのに。レイトショーなら全制覇も夢ではないのに(夢にしておけ)。いきどおりながら、わたしの勤める会社は、腐っても新宿区。こんなときに走らずいつ走る。わたしのなかの熱血がさわぎ、2度参加することができましたが、息をきらせながらピンク映画を観に行くなんて、まったくもって、どうなのか。いつの日か、もう少し行きやすい時間帯で特集がくまれることを、心から願います。

ヒバリ(2002)
  
カラー/65分/成人館公開題『したがる先生 濡れて教えて』/監督:今岡信治/出演:高野まりえ、吉岡睦雄、米倉あや、小倉あずさ、松島圭二朗
高校教師の紀子は、年下の恋人・耕一と最近うまくいっていない。原因は耕一の浮気。同僚の智美が見かねて仲を取り持とうとするが、タイミングが合わない。一方、耕一はひょんなことから知り合った孝子に惹かれていく…。現在までに上映機会の少なかったレアな作品にして、本作以降いまおか組の常連となった、俳優・吉岡陸雄デビュー作。

しかし1本目に観たこれは、別に。ぐだぐだな恋愛ぐだぐだな浮気、孤独、にぶい痛み。話としても、出演者にしても、特にこれといって魅力を感じない。ピンクとしてはこの身近さがいいのかしら。しかし登場人物がかかえている寂しさの描写がよかった。寂しさが、時々、発光するようにぼうっとまぶしく光って見えるのはなぜ。
(公式ブログでの、吉岡睦雄の紹介文がぐっときます。(→☆)

かえるのうた(2008)
  
カラー/65分/成人館公開題『援助交際物語 したがるオンナたち』/監督・脚本:いまおかしんじ/音楽:ビト/出演:向夏、平沢里菜子、吉岡睦雄、 七瀬くるみ、佐藤宏、伊藤猛川瀬陽太
浮気者の彼氏に愛想をつかした朱美と漫画家を目指すキョウコ。漫画喫茶で同じ本を取ったことから奇妙な友情関係が芽 生えていく。援交オヤジのブキミな性行為に耐えたり、ゴスロリ女とフランスパンで殴りあいなど、無傷ではいられない「女の子として生きる日常」が独特のユーモアで描かれる。数年後再会した2人が突如踊りだすパーティー感あふれるフィナーレには感涙必死。<2005年度ピンク大賞ベスト10・第1位、女優賞(向夏) 新人女優賞(平沢里菜子)、男優賞(吉岡睦雄)受賞

以前yukazo_kさんに絶賛されたので(この映画だけでマイフェイバリット監督にいまおかしんじを挙げると言っていた) 観なくては!とじりじりしてました。
女の子として生きる日常は無傷でいられない、か。たしかにすねに傷ばかり。その傷をいとしく思うには、まだ距離がたりなくて、ひりひりしながら観てました。ひりひりしてたので、さいご踊ってくれてよかった。タフって別にいいことでもないけど。踊ってたたえればいいじゃない。この日のトークショーで鈴木監督が、いまおか映画に登場する女性の抱える生きづらさについて言及していて、なるほどこれか。と思いました。
しかしこの映画をピンクとして見ると、女の人が痛々しさが切実で、こんなんでいいの?と心配になる。ピンク映画としての公開タイトル(どれもいさましすぎる)も、うそだあ、だしね‥。

以下は別の日に観た(基本2本立て。ピンクは1作1時間くらいなのね)。この日は出遅れて、乗りたい電車に乗れなくて、東中野から、走って走って息をきらしながらポレポレ入り。俺よ、そんなに観たいのか‥などと思いつつ。

ヒモのひろし(2005)
  
カラー/64分/成人館公開題『SEXマシン 卑猥な季節』/監督:田尻裕司/脚本:守屋文雄/出演:吉岡睦雄、平沢里菜子藍山みなみ、松浦祐也、佐野和宏
子持ちの女の元へ転がり込んだヒロシは近所のオヤジたちとコオロギ相撲に興じる日々。ヒロシを演じる吉岡睦雄が疾走する冒頭から映画が躍動。ヒロイン平沢里菜子の魅力も加わり、丹念に描かれる日常の描写が輝き、驚愕の展開も包み込んでしまう快作。『おんなの河童』で死神役と脚本を担当した守屋文雄の映画脚本デビュー作。<第2回ピンクシナリオ大賞・グランプリ>

おもしろかったー。走って来てよかった。これ観られてよかった。なんだ、この、ばかばかしくも壮大な人間のいとなみは。地に足のついた逸脱。大好きだなあ。きもちよく、煙に巻かれて、にこにこしちゃう。まいったなあ。コオロギ相撲、わたしも観戦したい。
しかし、すーごいおもしろかった‥!と思ったら、これ、いまおか監督作品じゃなかった。田尻作品も追いかけなくちゃならんのか‥。
(守屋文雄による紹介文も、なんか切なくて素敵。→☆

おじさん天国(2006)
  
カラー/64分/成人館公開題『絶倫絶女』/監督:いまおかしんじ/脚本 : 守屋文雄/音楽: ビト/出演:下元史朗、藍山みなみ、 吉岡睦雄、松原正隆、平沢里菜子、佐々木ユメカ、伊藤猛
フラリとやって来たボクのおじさんが巻き起こす非日常の 日々。やがておじさんは地獄に堕ちてしまう……。いまおか版『男はつらいよ』+『地獄』という趣のゆるゆるな魅力に満ちた愛すべきおじさん賛歌。水産加工場が舞台かつ一度聴い たら耳について離れない久米水産社歌を歌うシーンなど、『おんなの河童』の原点を思わせる1本。<2005年度ピンク大賞ベスト10・第8位 女優賞(藍山みなみ)、男優賞(下元史朗、吉岡睦雄)受賞>

地獄だとか伊藤猛のエンマ大王とか、すーごいおもしろかったんだけど。いかんせんおじさんのアクが強すぎた。なんか、すごい、胸焼け。おじさん天国はおじさん地獄。ぶるぶるぶる。
どうでもいいけど今回の特集で観た4本は4本とも男優が吉岡睦雄で(すべてのいまおか映画がそうなのか、と思ったらそういうわけでもなさそうなのに)。この世に男は吉岡しかおらんのか!しかしそれもまたよし。そんな気分になりました。

:

どれもおもしろくって、好きなかんじで、いいもの見たなあ。こういうファンタジックな世界が、ピンク映画のなかにあったなんて。いいもの見つけてうれしいんだけど、少し困った。ピンク映画まで守備範囲にしなくちゃいけないなんて。そういえば、このあいだうら若く可憐な乙友が、「すごく素敵な感想を読んだので‥、わたし、これから、官能小説にも挑戦しようと思うんです」ときらきらした瞳で打ち明けて(?)くれたっけ。乙女はイバラの道を行くんだなあ、なんてぼんやり感動したけれど、他人ごとではなかった‥*1

*1:というか、わたしのこういう暴走癖を見込まれて(?)の発言だったのか